DJセットで出演したFUJI ROCK FESTIVAL '23では、深夜の会場を祝祭の場に変えたことも記憶に新しいロミーが待望のデビューアルバム『Mid Air』を引っ提げ、初の単独来日公演を行った。
人気インディロックバンド、The xxのメンバーとしての活躍はすでに多くの日本の音楽ファンが知るところだが、ソロではよりダンスミュージック/エレクトロニックミュージックに接近。全世界から絶賛されている『Mid Air』では、フレッド・アゲインをフィーチャーしたシングル「Strong」が、2024年2月に行われる第66回グラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニック・レコーディング賞にもノミネートされるなど、高く評価されている。それだけにグラミー賞受賞の期待もかかるなかでの単独来日公演は、日本のファンからすると絶好のタイミングで行われたイベントとなった。
"CLUB MID AIR"と題された今回の単独来日公演では、イベント名が表すとおり、開場と同時にサポートアクトによるDJタイムがスタート。クラブさながらの薄暗い空間では、赤い照明に照らされながら、フランス出身のDJ&セレクターでWAIFUの主催メンバーChloe Julietteと、プロデューサーでもあり電子音楽家&DJのSHIZKAによるB2B(Back to Back)DJセットが披露された。
そのDJセットでは、会場の雰囲気を温めるべく、序盤から中盤にかけてはムーディーなテックハウスやディープハウス、テクノがプレイされた。しかし、終盤に差しかかかった頃から、会場の空気が徐々に熱気を帯びてくると、ふたりはよりアップリフティングな選曲にシフト。ファンキーなフィルターハウスやこれまで世界中のクラブを盛り上げてきたシカゴハウス、テクノのクラシックなどを織り交ぜた巧みな選曲で観客のボルテージを一気に高めていった。また、DJタイムの終盤にはライブを控えるロミーがサプライズでDJブースに登場。冴えたDJプレイで会場を見事に温めたふたりを労う場面も見られた。
そして、『Mid Air』収録曲「Loveher」のフレーズをループさせた音源が鳴りだすと、会場後方に設置されたDJブースからロミーは、ライブのサポートメンバーが待つ正面のメインステージに移動。「Weightless」からライブをスタートすると、楽曲の間奏パートでは腕を高く上げ、踊る姿を見せるなど、のっけからハイテンションのパフォーマンスを披露した。
続く「Lifetime」披露時には、会場に集まった観客に向けて、「こんにちは、東京!」と挨拶。青や緑の明滅するライトに合わせて楽しげに飛び跳ねながら歌う姿が印象的だった。さらに「She's On My Mind」披露時には「ありがとうございます。東京!」という言葉を口にし、交錯する眩く光る黄色いライトの中で髪を振り乱しながら歌う様子に会場は大盛り上がり。さらにロミーが曲のハンドクラップ音に合わせて、観客に手拍子を打つように要求すると、観客はすぐさまそれに応え、リズミカルな手拍子の音が会場にこだました。それに満足したロミーが「パーフェクト!」と口にした瞬間は、この日のライブのハイライトのひとつだった。
また、3曲を披露し終えたあとのMCでは、ライブセットで『Mid Air』収録曲を日本で披露するのは今回が初となることをロミーが口にすると、会場からはその言葉に応えるかのように「ロミー!」という大きな声が上がった。そして、「The Sea」からライブを再開すると、ロミーは90年代クラブクラシックのFragma「Toca Me」とCeCe Peniston「Finally」をマッシュアップしたカバーを披露。ここでより一層クラブ感が高まると、ギアを上げたロミーはトランシーな『Mid Air』収録曲「Twice」と「Did I」、さらにはトランスクラシックのSystem F「Out Of The Blue」のカバーを披露したことで会場はより一層の盛り上がりを見せた。
ライブ終盤では『Mid Air』のオープニングを飾るリード曲「Loveher」が、サポートメンバーの生演奏によるキーボードのフレーズにあわせて情念たっぷりに歌い上げられたほか、ハッピーなバイヴスに満ちたダンスチューン「Enjoy Your Life」も披露された。特に同曲のサビパートではロミー自身が同曲の"Enjoy Your Life"という歌詞のパートを観客に歌わせるパフォーマンスをおこなったことで、会場からは観客による大合唱が起こるほどの盛り上がりが見られたが、ここでライブは一旦終了。
しかし、会場のそこかしこから「まだやってない曲があるよね?」と声が聞こえ出すと、その声に応えるべく、姿を消していたロミーが再びステージに登場。この日集まった観客だけでなく、ステージで自分を支えてくれたサポートメンバーとオープニングアクトとしてライブ会場を盛り上げたふたりのDJに対しても感謝の言葉を述べると、ロミーは一筋の白いライトに照らされながらアンコールの1曲目「Lights Out」を歌い上げた。さらにこの日のライブを締め括る曲として、多幸感のあるアンセム「Strong」を披露。誰もが待ち望んでいた人気曲のダンサブルなビートに身を委ねつつ、音が止まるその瞬間まで観客は踊り続けた。
こうして大盛況のうちにライブを終えたロミーは、最後に「ありがとう。また近いうちにお会いしましょう」と語るとともに、手で作ったハートマークをこの日集まった観客に感謝を込めて示しながらステージを後にした。
今回のライブでは、まるでレイヴカルチャーを題材にした青春映画のクラブシーンのようにそこに集まった人々の心も身体もひとつになるかのような感覚を覚えたが、それこそがロミーが『Mid Air』とCLUB MID AIRを通じてファンに届けたかったメッセージなのだろう。
そんなダンスミュージック/エレクトロニックミュージックの醍醐味を改めて、この身体にしっかりと刻んだからこそ、近い将来、再びCLUB MID AIRがここ日本で行われることに期待ぜずにはいられない。
Text by Jun Fukunaga
人気インディロックバンド、The xxのメンバーとしての活躍はすでに多くの日本の音楽ファンが知るところだが、ソロではよりダンスミュージック/エレクトロニックミュージックに接近。全世界から絶賛されている『Mid Air』では、フレッド・アゲインをフィーチャーしたシングル「Strong」が、2024年2月に行われる第66回グラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニック・レコーディング賞にもノミネートされるなど、高く評価されている。それだけにグラミー賞受賞の期待もかかるなかでの単独来日公演は、日本のファンからすると絶好のタイミングで行われたイベントとなった。
"CLUB MID AIR"と題された今回の単独来日公演では、イベント名が表すとおり、開場と同時にサポートアクトによるDJタイムがスタート。クラブさながらの薄暗い空間では、赤い照明に照らされながら、フランス出身のDJ&セレクターでWAIFUの主催メンバーChloe Julietteと、プロデューサーでもあり電子音楽家&DJのSHIZKAによるB2B(Back to Back)DJセットが披露された。
そのDJセットでは、会場の雰囲気を温めるべく、序盤から中盤にかけてはムーディーなテックハウスやディープハウス、テクノがプレイされた。しかし、終盤に差しかかかった頃から、会場の空気が徐々に熱気を帯びてくると、ふたりはよりアップリフティングな選曲にシフト。ファンキーなフィルターハウスやこれまで世界中のクラブを盛り上げてきたシカゴハウス、テクノのクラシックなどを織り交ぜた巧みな選曲で観客のボルテージを一気に高めていった。また、DJタイムの終盤にはライブを控えるロミーがサプライズでDJブースに登場。冴えたDJプレイで会場を見事に温めたふたりを労う場面も見られた。
そして、『Mid Air』収録曲「Loveher」のフレーズをループさせた音源が鳴りだすと、会場後方に設置されたDJブースからロミーは、ライブのサポートメンバーが待つ正面のメインステージに移動。「Weightless」からライブをスタートすると、楽曲の間奏パートでは腕を高く上げ、踊る姿を見せるなど、のっけからハイテンションのパフォーマンスを披露した。
続く「Lifetime」披露時には、会場に集まった観客に向けて、「こんにちは、東京!」と挨拶。青や緑の明滅するライトに合わせて楽しげに飛び跳ねながら歌う姿が印象的だった。さらに「She's On My Mind」披露時には「ありがとうございます。東京!」という言葉を口にし、交錯する眩く光る黄色いライトの中で髪を振り乱しながら歌う様子に会場は大盛り上がり。さらにロミーが曲のハンドクラップ音に合わせて、観客に手拍子を打つように要求すると、観客はすぐさまそれに応え、リズミカルな手拍子の音が会場にこだました。それに満足したロミーが「パーフェクト!」と口にした瞬間は、この日のライブのハイライトのひとつだった。
また、3曲を披露し終えたあとのMCでは、ライブセットで『Mid Air』収録曲を日本で披露するのは今回が初となることをロミーが口にすると、会場からはその言葉に応えるかのように「ロミー!」という大きな声が上がった。そして、「The Sea」からライブを再開すると、ロミーは90年代クラブクラシックのFragma「Toca Me」とCeCe Peniston「Finally」をマッシュアップしたカバーを披露。ここでより一層クラブ感が高まると、ギアを上げたロミーはトランシーな『Mid Air』収録曲「Twice」と「Did I」、さらにはトランスクラシックのSystem F「Out Of The Blue」のカバーを披露したことで会場はより一層の盛り上がりを見せた。
ライブ終盤では『Mid Air』のオープニングを飾るリード曲「Loveher」が、サポートメンバーの生演奏によるキーボードのフレーズにあわせて情念たっぷりに歌い上げられたほか、ハッピーなバイヴスに満ちたダンスチューン「Enjoy Your Life」も披露された。特に同曲のサビパートではロミー自身が同曲の"Enjoy Your Life"という歌詞のパートを観客に歌わせるパフォーマンスをおこなったことで、会場からは観客による大合唱が起こるほどの盛り上がりが見られたが、ここでライブは一旦終了。
しかし、会場のそこかしこから「まだやってない曲があるよね?」と声が聞こえ出すと、その声に応えるべく、姿を消していたロミーが再びステージに登場。この日集まった観客だけでなく、ステージで自分を支えてくれたサポートメンバーとオープニングアクトとしてライブ会場を盛り上げたふたりのDJに対しても感謝の言葉を述べると、ロミーは一筋の白いライトに照らされながらアンコールの1曲目「Lights Out」を歌い上げた。さらにこの日のライブを締め括る曲として、多幸感のあるアンセム「Strong」を披露。誰もが待ち望んでいた人気曲のダンサブルなビートに身を委ねつつ、音が止まるその瞬間まで観客は踊り続けた。
こうして大盛況のうちにライブを終えたロミーは、最後に「ありがとう。また近いうちにお会いしましょう」と語るとともに、手で作ったハートマークをこの日集まった観客に感謝を込めて示しながらステージを後にした。
今回のライブでは、まるでレイヴカルチャーを題材にした青春映画のクラブシーンのようにそこに集まった人々の心も身体もひとつになるかのような感覚を覚えたが、それこそがロミーが『Mid Air』とCLUB MID AIRを通じてファンに届けたかったメッセージなのだろう。
そんなダンスミュージック/エレクトロニックミュージックの醍醐味を改めて、この身体にしっかりと刻んだからこそ、近い将来、再びCLUB MID AIRがここ日本で行われることに期待ぜずにはいられない。
Text by Jun Fukunaga