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Snail Mail / オルタナティヴ・ロックの「現在」が、ひたむきな想いから鳴らされている。 5年振りの単独公演のライブレポートを公開!
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Snail Mail / オルタナティヴ・ロックの「現在」が、ひたむきな想いから鳴らされている。 5年振りの単独公演のライブレポートを公開!

2023.12.05

Snail Mail / オルタナティヴ・ロックの「現在」が、ひたむきな想いから鳴らされている。 5年振りの単独公演のライブレポートを公開!

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Photo by Fuki Ishikura

2023/12/04 (Mon) UMEDA CLUB QUATTRO

凛々しいギター・ロック・ミュージック。その日のスネイル・メイルのライヴの印象を一言で表せば、そんな風になるだろうか。オルタナティヴ・ロックの「現在」が、ひたむきな想いから鳴らされている――そんな風に感じられたのだ。

単独ツアーとしては5年ぶり、サウンドの幅を広げたセカンド・アルバム『Valentine』リリース後は2022年のフジロック以来の来日公演。19時を少し過ぎ、ショート・ボブにジーンズのスタイルがよく似合うリンジー・ジョーダンがステージに現れると歓声が上がる。今回はリンジー(gt)、アレックス・ベース(ba)、レイ・ブラウン(dr)のシンプルな3ピース編成で、オープニングの「Heat Wave」から息の合った過不足ないアンサンブルを聴かせてくれる。世界中をツアーで回った経験から来るものだろう、ファースト収録の楽曲はとくに音源よりもスケールが増していて、リンジーひとりではなくバンドとしてのたしかな成長を感じさせる。2曲目は『Valentine』から「Ben Franklin」。一転してイントロではリンジーのメランコリックな歌声が引っ張っていく。こうしてライヴで聴くと、同作からの楽曲のヴァラエティがよく伝わってくる。10代で鮮烈なデビューを飾った彼女が、様々な経験から精神的にもがいた痕跡を多様な音楽性で刻んだのが『Valentine』だった。そこでスネイル・メイルの可能性が大きく開かれたのだ。

「昨日の夜着いたばかりだけど、すごく元気だよ!」と話すリンジーは終始明るく、ピリピリした様子を見せることもあったフジロックのステージとはまた違うヴァイブスでライヴを進めていく。オーディンスとの距離の近さに安心するところもあったのだろう。そんなリンジーは強アルコールのチューハイを「あの凶悪な飲み物は何!?」と言って観客を笑わせるなどあくまで自然体だが、ひとたび歌い始めると一気に楽曲が醸す空気に引きこんでみせる。とりわけダークなムードのある「Madonna」のようなナンバーではブルージーな歌声で奥ゆきを生み出しており、シンガーとしての突出した表現力をあらためて発揮していた。

もちろんギター・ロック・バンドとしての気持ちよさを誇っているのもスネイル・メイルの魅力で、中盤、スーパードラッグのパワー・ポップの名曲「Feeling Like I Do」のカヴァーではストレートにアンセミックなロック・サウンド生み出していた。90年代オルタナの正統な後継者として、みずみずしいギター・ロックを飾らずに現代のものとして鳴らせるのが彼女たちなのだ。ギターを次々に持ち替えるリンジーの姿が頼もしい。

終盤はR&Bのムードを持った「Forever (Sailing)」や、ダイナミックなアンサンブルでカタルシスを生む「Valentine」、リンジーがソロで弾き語る切ないバラード「Mia」と、現在のスネイル・メイルの引き出しの多さを見せたかと思えば、初期の代表曲「Pristine」やライヴでしばしば披露するコートニー・ラヴのカヴァー「The 2nd Most Beautiful Girl in the World」ではギター・ロック・バンドらしい勢いと清々しさを放っていた。

そして客電がついてこの日のライヴは終了……かと思いきや、おそらく予定していなかっただろうアンコールに応え、ステージに戻ったリンジーは「c. et al.」をソウルフルに弾き語った。その瞬間瞬間を大切にする気持ちがたしかに伝わり、胸が温かくなる。インディ精神を真っ当に引き継いだスネイル・メイルは、オーディエンスと親密な関係を築きながら特別な夜を作り上げたのだった。

Text by 木津毅

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