Photo by Kazumichi Kokei
Alex G 2023/11/27 @O-east
アレックス・Gことアレックス・ジアナスコーリのアルバムは、ほとんどの曲を彼がひとりで演奏している。しかしここ数年はギターのサミュエル・アッチオーネ、ベースのジョン・ヘイウッド、ドラムのトム・ケリーという不動のメンバーでツアーを続けており、そんな彼らが最新スタジオ作『God Save The Animals』からの曲を中心に演奏した今年6月リリースのライヴ・アルバム『Live From Union Transfer』で、初めてバンドとしての全貌に触れたという人も多いだろう。
コロナ禍による延期を経て実現、満員の観客に迎えられた待望の初来日公演もそんな『Live From Union Transfer』とよく似た選曲だったが、アレックスのパートナーでもある女性ヴァイオリニスト、モリー・ガーマーが不在ということもあったのか、アルバムにあったカントリー色はほぼ払拭され、想像以上にラウドで、重心の低いサウンドになっていたのには驚かされた。来年にはフー・ファイターズのスタジアム・ツアーでサポートを務めることも決まっているアレックスだが、無精ヒゲを蓄え、大股開きでギターを掻き鳴らして歌うその姿に、デイヴ・グロールが重なったのは自分だけだろうか。圧巻だったのはライヴ盤ではオミットされていた「Brick」〜「Horse」という『Rocket』からの2曲のメドレーで、ラップ・メタルのようなアグレッシヴな演奏を披露。興奮した客席からは、「Alex God(アレックス・ゴッド)!」という気の利いた掛け声も飛んでいた。
ライヴの後半では「Sarah」、「Mary」といった初期の名曲を聴かせてファンを喜ばせてくれたが、ハードな一面もあるアレックス・Gがマッチョにならずに済んでいるのは、どこか子供らしさを残した、彼の歌声のおかげでもあるだろう。アルバムではヴォコーダーを駆使して様々な声色を使い分けているアレックスだが、ライヴでは時折ギターのサミュエルの助けを借りつつ、デス声からファルセットまでを歌いこなしており、その唱法は喉を酷使するのか、終盤のラヴソング「Miracles」では、声がかすれて裏返ってしまう瞬間も。そのことが逆に曲の持つ脆さや無防備さを際立たせてもいたのだが、ここでひとつの奇跡が起こる。演奏が終わった後、アレックスが上を向いて「ゴホン!」と大きな咳払いをすると、なんと続く本編ラストの「Forgive」では、彼の声が元通りになっていたのである。
これが過酷なツアーを乗り越えるコツかと感心してしまったが、奇跡はこれだけでは終わらない。インターバルもそこそこにステージに戻ってきたアレックスとその仲間たちは客席からリクエストを募り、2010年のファースト・アルバムからの「Gnaw」や、日本デビューとなった名作『House of Sugar』からの「Southern Sky」など、アンコールを即席で7曲も演奏。これには来日を待ちわびたファンも大満足だったに違いないが、余韻に浸っている間もなく、なぜか場内にはピクサー映画『カーズ』の主題歌としても知られるラスカル・フラッツの「Life Is A Highway」が爆音で響き渡る。なんでも最近のライヴのお決まりらしいが、こんなバッド・テイストとグッド・メロディが同居しているのが、アレックス・Gの魅力だと言えるだろう。会場で売られていたツアー・Tシャツに描かれた、レンガ(Brick)を投げつけられて顔の潰れたフェリックスのパチモンっぽいキャラクター。そんな子供っぽいイタズラ心こそまさに、アレックス・Gの音楽そのものだ。
Text by清水祐也
PLAYLIST
https://music.apple.com/jp/playlist/alex-g-japan-tour-2023/pl.u-JPAZqAJCDz04kMb
https://open.spotify.com/playlist/4P5VCRP7g3xkq5cxBHk2g7
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締切は12月3日 / 商品は12月下旬より発送予定。
Alex G - Brick Tee
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13799
Alex G - Angel Tee
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Alex G - Blessing Tote
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13801
Alex G 2023/11/27 @O-east
アレックス・Gことアレックス・ジアナスコーリのアルバムは、ほとんどの曲を彼がひとりで演奏している。しかしここ数年はギターのサミュエル・アッチオーネ、ベースのジョン・ヘイウッド、ドラムのトム・ケリーという不動のメンバーでツアーを続けており、そんな彼らが最新スタジオ作『God Save The Animals』からの曲を中心に演奏した今年6月リリースのライヴ・アルバム『Live From Union Transfer』で、初めてバンドとしての全貌に触れたという人も多いだろう。
コロナ禍による延期を経て実現、満員の観客に迎えられた待望の初来日公演もそんな『Live From Union Transfer』とよく似た選曲だったが、アレックスのパートナーでもある女性ヴァイオリニスト、モリー・ガーマーが不在ということもあったのか、アルバムにあったカントリー色はほぼ払拭され、想像以上にラウドで、重心の低いサウンドになっていたのには驚かされた。来年にはフー・ファイターズのスタジアム・ツアーでサポートを務めることも決まっているアレックスだが、無精ヒゲを蓄え、大股開きでギターを掻き鳴らして歌うその姿に、デイヴ・グロールが重なったのは自分だけだろうか。圧巻だったのはライヴ盤ではオミットされていた「Brick」〜「Horse」という『Rocket』からの2曲のメドレーで、ラップ・メタルのようなアグレッシヴな演奏を披露。興奮した客席からは、「Alex God(アレックス・ゴッド)!」という気の利いた掛け声も飛んでいた。
ライヴの後半では「Sarah」、「Mary」といった初期の名曲を聴かせてファンを喜ばせてくれたが、ハードな一面もあるアレックス・Gがマッチョにならずに済んでいるのは、どこか子供らしさを残した、彼の歌声のおかげでもあるだろう。アルバムではヴォコーダーを駆使して様々な声色を使い分けているアレックスだが、ライヴでは時折ギターのサミュエルの助けを借りつつ、デス声からファルセットまでを歌いこなしており、その唱法は喉を酷使するのか、終盤のラヴソング「Miracles」では、声がかすれて裏返ってしまう瞬間も。そのことが逆に曲の持つ脆さや無防備さを際立たせてもいたのだが、ここでひとつの奇跡が起こる。演奏が終わった後、アレックスが上を向いて「ゴホン!」と大きな咳払いをすると、なんと続く本編ラストの「Forgive」では、彼の声が元通りになっていたのである。
これが過酷なツアーを乗り越えるコツかと感心してしまったが、奇跡はこれだけでは終わらない。インターバルもそこそこにステージに戻ってきたアレックスとその仲間たちは客席からリクエストを募り、2010年のファースト・アルバムからの「Gnaw」や、日本デビューとなった名作『House of Sugar』からの「Southern Sky」など、アンコールを即席で7曲も演奏。これには来日を待ちわびたファンも大満足だったに違いないが、余韻に浸っている間もなく、なぜか場内にはピクサー映画『カーズ』の主題歌としても知られるラスカル・フラッツの「Life Is A Highway」が爆音で響き渡る。なんでも最近のライヴのお決まりらしいが、こんなバッド・テイストとグッド・メロディが同居しているのが、アレックス・Gの魅力だと言えるだろう。会場で売られていたツアー・Tシャツに描かれた、レンガ(Brick)を投げつけられて顔の潰れたフェリックスのパチモンっぽいキャラクター。そんな子供っぽいイタズラ心こそまさに、アレックス・Gの音楽そのものだ。
Text by清水祐也
PLAYLIST
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Alex G - Brick Tee
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