TSHA / 深夜の苗場でしなやかな才気を見せつけたダイナミックなグルーヴ!自身のDJセットのように様々なエレメントを融合!
TSHA @ RED MARQUEE 7/29 (SAT)
これまで卓越したDJプレイで各国のフロアを沸かせてきたDJ/プロデューサーのTSHAによる初来日のパフォーマンス。彼女のライブセットは6月にPrimavera Soundで初披露され、この後も数えるほどしかなく、貴重な機会だ。ベースとキーボードそのほかインストゥルメンタルをプレイするTSHAに加えて、ドラム、ギター、ヴォーカルというフォーピースによるセットはサイケデリックな「Running」からスタートし、そのままDJミックスのようにスムースに「Power」へと続いていく。
彼女のライブを体験してみると、2022年にリリースされたアルバム『Capricorn Sun』が契機だったことがわかる。フィーチャリング・ヴォーカルのアカペラからトラックの制作を試みたり、パートナーであるプロデューサー、Mafroとのコラボレーションを行ったりと、多彩なトラックメイキングの手法で、アンダーグラウンドのエレクトロニック・ミュージックにある高揚感を軸に、ポップソングとしての完成度が極められた作品だった。こうしたナンバーをバンド編成によりシームレスに演奏することで、再びフロアサイドへ持ち込む。「Power」はUKファンクバンド、Direct Driveのサンプルを下敷きにしていたが、それを自らのバンドで再解釈することで新たなグルーヴが生まれていたし、2020年発表のEP『Flowers』からの「Renegade」「Change」のいなたいソウルフルな流れは、洗練されたトラックとは別の表情が顔を覗かせる。
アフロハウス的プロダクションとマリ音楽をマッシュアップさせた「Water」のアップリフティングな空気、そして「Time」のゆったりとバレアリックなムードが、開放的な苗場の夜に映える。原曲のブロークンビーツ的疾走感がさらに加速した「Anxious Mind」は、彼女も「手を挙げて!」とオーディエンスを煽る。
白眉だったのは後半に披露された「Sister」だ。自身もMCで語っていたが、ロックダウン中に異母妹がいることを知り、大切な関係を育むことができたことをモチーフにしていて、UKベース的リズムの骨格と清涼感あふれるアレンジメント、という美しいバランス感覚を持つ曲が、バンドセットにより力強い説得力を生んでいた。この後に登場したRed Marqueeに登場したRomyもプレイリストに入れている「Dancing In The Shadows」は、2000年代初頭のイビザの雰囲気たっぷりのナンバーだが、ブレイクビーツが生ドラムに変わることで、また別のダイナミズムが生まれていた。
80~90年代のムードをたたえた「OnlyL」、そしてセットの最後となった「Giving Up」のメランコリックな感情とダイナミックなグルーヴを浴びながら、周囲のオーディエンスからも「いちばん楽しい!」と歓喜の声があふれる。楽曲そのものが自身のDJセットのように様々なエレメントを融合させていくスタイルが、ライブセットを通すことでより明確となった。深夜の苗場でしなやかな才気を見せつけたTsha。今後、BONOBOやFloating Pointsなど、ライブセットに定評のあるアクトに名を連ねることは間違いない。
Text by 駒井憲嗣
TSHA @ RED MARQUEE 7/29 (SAT)
これまで卓越したDJプレイで各国のフロアを沸かせてきたDJ/プロデューサーのTSHAによる初来日のパフォーマンス。彼女のライブセットは6月にPrimavera Soundで初披露され、この後も数えるほどしかなく、貴重な機会だ。ベースとキーボードそのほかインストゥルメンタルをプレイするTSHAに加えて、ドラム、ギター、ヴォーカルというフォーピースによるセットはサイケデリックな「Running」からスタートし、そのままDJミックスのようにスムースに「Power」へと続いていく。
彼女のライブを体験してみると、2022年にリリースされたアルバム『Capricorn Sun』が契機だったことがわかる。フィーチャリング・ヴォーカルのアカペラからトラックの制作を試みたり、パートナーであるプロデューサー、Mafroとのコラボレーションを行ったりと、多彩なトラックメイキングの手法で、アンダーグラウンドのエレクトロニック・ミュージックにある高揚感を軸に、ポップソングとしての完成度が極められた作品だった。こうしたナンバーをバンド編成によりシームレスに演奏することで、再びフロアサイドへ持ち込む。「Power」はUKファンクバンド、Direct Driveのサンプルを下敷きにしていたが、それを自らのバンドで再解釈することで新たなグルーヴが生まれていたし、2020年発表のEP『Flowers』からの「Renegade」「Change」のいなたいソウルフルな流れは、洗練されたトラックとは別の表情が顔を覗かせる。
アフロハウス的プロダクションとマリ音楽をマッシュアップさせた「Water」のアップリフティングな空気、そして「Time」のゆったりとバレアリックなムードが、開放的な苗場の夜に映える。原曲のブロークンビーツ的疾走感がさらに加速した「Anxious Mind」は、彼女も「手を挙げて!」とオーディエンスを煽る。
白眉だったのは後半に披露された「Sister」だ。自身もMCで語っていたが、ロックダウン中に異母妹がいることを知り、大切な関係を育むことができたことをモチーフにしていて、UKベース的リズムの骨格と清涼感あふれるアレンジメント、という美しいバランス感覚を持つ曲が、バンドセットにより力強い説得力を生んでいた。この後に登場したRed Marqueeに登場したRomyもプレイリストに入れている「Dancing In The Shadows」は、2000年代初頭のイビザの雰囲気たっぷりのナンバーだが、ブレイクビーツが生ドラムに変わることで、また別のダイナミズムが生まれていた。
80~90年代のムードをたたえた「OnlyL」、そしてセットの最後となった「Giving Up」のメランコリックな感情とダイナミックなグルーヴを浴びながら、周囲のオーディエンスからも「いちばん楽しい!」と歓喜の声があふれる。楽曲そのものが自身のDJセットのように様々なエレメントを融合させていくスタイルが、ライブセットを通すことでより明確となった。深夜の苗場でしなやかな才気を見せつけたTsha。今後、BONOBOやFloating Pointsなど、ライブセットに定評のあるアクトに名を連ねることは間違いない。
Text by 駒井憲嗣