Squarepusher @ HERE at Outernet 4/14(FRI)
狂乱という言葉がここまで似合うアーティストだとは思いもしなかった。昨年9月にオープンしたばかりのクラブ、HERE at OuternetのステージにSquarepusherことトム・ジェンキンソンが姿を現したのはきっかり23時のことだった。極彩色に彩られたSquarepusherのロゴが映し出されると、フロアから待ちきれない観客の歓声が上がった。
18時から始まったこのイベントは、ソーホーというロンドン随一の繁華街の土地柄か、待ちに待った華の金曜日だからか、どこかずっとフワフワとした空気が流れていたが、彼の登場でその空気はガラリと変わった。流れ始めた弾むキックで緩やかなフロアには緊張感が張り詰める。低音の1音でさえ、先程まで会場を満たしていた音とは明らかに違う。未発表曲で固められたセットは、すぐさま最高速のブレイクビーツとなってフロアに雪崩れ込んできた。まさにゲーム・チェンジャー。セットが始まって5分も経たない間に、フロアは大きく揺れ、すでに熱狂が渦巻いていた。
もともと「WARNING: Sensory Overload Incoming…」(感覚的過負荷が発生します)と公式に銘打たれていたイベントだ。文字化けしたようなドットフォントがけたたましく動き回る映像が作り出す電脳世界に飛び込んだような没入感に、それを背景にしたドラムンベース、アシッド・テクノ、ディープ・ハウスといった変則的なアプローチで仕掛けてくる凶悪なサウンドが合わさると、もう脳内麻薬がドバドバと溢れ病みつきになってしまう。そんな音楽を聴いてしまえば、もはやフロアは誰にも止められない。目が眩むほどの照明と流れる轟音の中で押し寄せるカタルシスは、まさにSquarepusherでしか味わえない幸福感と言っても過言ではないだろう。
後半に入り、映像はノイズのような激しい点滅に移り変り、曲はよりアップテンポにより暴力的なビートへと変わっていく。「もはや踊るしかない」、観客の突き動かされる衝動を見透かしているかのように、トムは激しく体を揺らし、手を掲げ、叫び、フロアを煽っていった。続々とドロップされる強烈なキラーチューンに、フロアは狂乱に包まれ、観客は声をあげ踊って応えていく。積み上げては破壊しまた積み上げるような、この関係性が「アーティストvs観客」のような独特な一体感を作り上げていった。まるでボクシングの打ち合いのように、お互いが真剣に向き合い、遠慮なしで衝突し合っていく。
観客に休む暇などもちろん与えず、自分もノンストップで駆け抜けて、最後の最後までフロアを煽り続けたトムは、金属音やPCのエラー音を組み合わせたような破壊的な音でセットを終了させた。惜しむ声と共に送られた拍手喝采こそが大団円の何よりの証だろう。その拍手にトムもお辞儀をして応えると、まるで試合終了後にお互いを称え合っているような、あたたかな雰囲気が会場を包み込んでいた
彼の代名詞ともいえるベース・プレイを観ることはできなかったが、それにも関わらずフロアを大爆発させるトムの才能に、ずっとやられ続けた1時間はまさに音と光の大洪水。思い返せばひたすら凄まじい音と光を浴び続けているのに、「もっともっと」とさらに求めてしまう魅力が溢れているセットだった。まさに異次元のレイブ体験をした夜だった。
Text by 若林楓
狂乱という言葉がここまで似合うアーティストだとは思いもしなかった。昨年9月にオープンしたばかりのクラブ、HERE at OuternetのステージにSquarepusherことトム・ジェンキンソンが姿を現したのはきっかり23時のことだった。極彩色に彩られたSquarepusherのロゴが映し出されると、フロアから待ちきれない観客の歓声が上がった。
18時から始まったこのイベントは、ソーホーというロンドン随一の繁華街の土地柄か、待ちに待った華の金曜日だからか、どこかずっとフワフワとした空気が流れていたが、彼の登場でその空気はガラリと変わった。流れ始めた弾むキックで緩やかなフロアには緊張感が張り詰める。低音の1音でさえ、先程まで会場を満たしていた音とは明らかに違う。未発表曲で固められたセットは、すぐさま最高速のブレイクビーツとなってフロアに雪崩れ込んできた。まさにゲーム・チェンジャー。セットが始まって5分も経たない間に、フロアは大きく揺れ、すでに熱狂が渦巻いていた。
もともと「WARNING: Sensory Overload Incoming…」(感覚的過負荷が発生します)と公式に銘打たれていたイベントだ。文字化けしたようなドットフォントがけたたましく動き回る映像が作り出す電脳世界に飛び込んだような没入感に、それを背景にしたドラムンベース、アシッド・テクノ、ディープ・ハウスといった変則的なアプローチで仕掛けてくる凶悪なサウンドが合わさると、もう脳内麻薬がドバドバと溢れ病みつきになってしまう。そんな音楽を聴いてしまえば、もはやフロアは誰にも止められない。目が眩むほどの照明と流れる轟音の中で押し寄せるカタルシスは、まさにSquarepusherでしか味わえない幸福感と言っても過言ではないだろう。
後半に入り、映像はノイズのような激しい点滅に移り変り、曲はよりアップテンポにより暴力的なビートへと変わっていく。「もはや踊るしかない」、観客の突き動かされる衝動を見透かしているかのように、トムは激しく体を揺らし、手を掲げ、叫び、フロアを煽っていった。続々とドロップされる強烈なキラーチューンに、フロアは狂乱に包まれ、観客は声をあげ踊って応えていく。積み上げては破壊しまた積み上げるような、この関係性が「アーティストvs観客」のような独特な一体感を作り上げていった。まるでボクシングの打ち合いのように、お互いが真剣に向き合い、遠慮なしで衝突し合っていく。
観客に休む暇などもちろん与えず、自分もノンストップで駆け抜けて、最後の最後までフロアを煽り続けたトムは、金属音やPCのエラー音を組み合わせたような破壊的な音でセットを終了させた。惜しむ声と共に送られた拍手喝采こそが大団円の何よりの証だろう。その拍手にトムもお辞儀をして応えると、まるで試合終了後にお互いを称え合っているような、あたたかな雰囲気が会場を包み込んでいた
彼の代名詞ともいえるベース・プレイを観ることはできなかったが、それにも関わらずフロアを大爆発させるトムの才能に、ずっとやられ続けた1時間はまさに音と光の大洪水。思い返せばひたすら凄まじい音と光を浴び続けているのに、「もっともっと」とさらに求めてしまう魅力が溢れているセットだった。まさに異次元のレイブ体験をした夜だった。
Text by 若林楓