photo by Kobayashi Kazma
Pavement @ TOKYO DOME CITY 2/15 (WED)
プログラミング化された世界に映し出されたエラー・メッセージ
開演早々、ステージ後方のスクリーンに映し出される広大な砂漠の写真と、謎のポップアップ・ウィンドウ。ヴェイパーウェイヴ風のシュールな映像かと思ったのも束の間、満員の観客たちも、次第に違和感に気づき始める。そう、実はこれ、単なるVJのエラーだったのだ。しかしそんなハプニングをものともしないどころか、失敗も含めて最高の演出に変えてしまうのが、ペイヴメントのペイヴメントたる所以である。
1999年に地平線に別れを告げた彼らが、奇跡の再結成&来日を果たしたのが2010年。それから10年後に予定されていた再々結成はパンデミックによって延期されたが、3年後の昨日、ついにペイヴメントが東京ドームシティホールのステージに着陸した。
気がつけば解散から最初の再結成までの期間よりも長い13年の月日が流れ、その間に彼らの先輩であるソニック・ユースは解散し、盟友シルヴァー・ジューズのデヴィッド・バーマンはこの世を去り、前回の会場だった新木場スタジオ・コーストは無くなった。しかし目の前にあったのは、13年前と変わらないペイヴメントの5人の姿だ。変則チューニングのギターをニヒルに弾きこなし、セーターを脱いだだけで会場をどよめかせるスティーヴン・マルクマスに、「Kennel District」や「Painted Soldiers」といった持ち曲でパンキッシュなヴォーカルを聴かせるスパイラル・ステアーズ。ヒゲメガネにベストというダンディな出で立ちでバンドの屋台骨を支えるドラマーのスティーヴ・ウェストがマルチ奏者のボブ・ナスタノヴィッチに絡まれるのを見ながら、ニコニコと笑顔を浮かべるベースのマーク・アイボルド。いや、正確に言えば、少しは変わったのかもしれない。メンバーは全員相応に歳を取り、シングルのB面曲だった「Harness Your Hopes」が2020年にTikTokで突然のバイラル・ヒットを記録し、ボブは競馬好きが高じて馬主になっていた。だけど彼らが揃った時に醸し出される空気感は、今も当時のままなのだ。
もちろん新機軸もある。ザ・マインダーズ〜ワイルド・フラッグのメンバーだったレベッカ・コールがサポート・キーボーディストとして加わったことによって、これまであまり演奏できなかった曲もレパートリーに加わり、もともと自由な存在だったボブが、鎖を解かれた狂犬のように、ステージを所狭しと暴れ回る。「We Dance」でバレエ・ダンサーのように華麗に舞い、「Unfair」で絶叫し、機材トラブルの最中に珍妙な縦笛を吹いて場を和ませる彼は、間違いなくこの日のMVPだった。
ライヴの終盤、スパイラル・ステアーズが「前回ここに来た時は、a-haの後に演奏したんだ」とサマーソニック出演時のエピソードを披露すると、マルクマスが即興で彼らのヒット曲「Take On Me」のフレーズを弾き始める一幕があった。この2組にはどちらもエコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」をカバーしているという共通点があるが、まさにここ東京ドームシティホールで予定されていたa-haの来日公演が延期のうえ中止され、ペイヴメントがそのステージに立っているということに、運命のいたずらを感じずにはいられない。
この日演奏されたのは全部で28曲。実に2時間に及ぶライヴだったが、それでも今回の再々結成ツアーで演奏されている曲の、ほんの半分に過ぎない。日替わりのセットリストで知られる彼らが、続く東京、大阪公演でどんな名曲を披露してくれるのか楽しみは尽きないが、ペイヴメントとはプログラミング化された世界に映し出されたエラー・メッセージであり、10年おきに現れては、「何かがおかしいようです」という、忘れていたことを思い出させてくれるのだ。
Text by 清水祐也(Monchicon!)
USオルタナ、ローファイ・シーンを代表する伝説的バンド、ペイヴメントの2010年以来となる13年ぶりとなる単独来日ツアー開催中。会場では今回の来日を記念して1997年のヨーロッパ・ツアーの音源を収録したライヴ作品『Live Europaturnen MCMXCVII』2タイトルが初めてカラー盤として再発決定。パープル盤は1997年4月11日に行われたロンドン公演の模様を収録し、2008年にリリースされた『Brighten The Corners: Nicene Creedence Ed』の特典として付属。そしてオレンジ盤は1997年8月15日にドイツ公演の模様を収録し、2009年のレコードストアデイで限定発売されたもので、それぞれ中古市場でも高値で取引されているレア・アイテム。ペイヴメントのファンは是非会場に足を運んで手に入れて欲しい。
PAVEMENT JAPAN TOUR 2023
東京公演
2023年 2月16日(木) TOKYO DOME CITY HALL
Support Act:ミツメ
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET SS 席¥9,500 S 席¥8,500(税込/別途 1 ドリンク)
※未就学児入場不可
当日券販売18:00〜
<問>クリエイティブマン 03-3499-6669
大阪 公演
2023年 2月18日(土) なんばHatch
OPEN 17:00/ START 18:00
TICKET スタンディング¥8,500 2F 指定¥9,500(税込/別途 1 ドリンク)
※未就学児入場不可
前売りチケット発売中
<問>キョードーインフォメーション 0570-200-888
Pavement @ TOKYO DOME CITY 2/15 (WED)
プログラミング化された世界に映し出されたエラー・メッセージ
開演早々、ステージ後方のスクリーンに映し出される広大な砂漠の写真と、謎のポップアップ・ウィンドウ。ヴェイパーウェイヴ風のシュールな映像かと思ったのも束の間、満員の観客たちも、次第に違和感に気づき始める。そう、実はこれ、単なるVJのエラーだったのだ。しかしそんなハプニングをものともしないどころか、失敗も含めて最高の演出に変えてしまうのが、ペイヴメントのペイヴメントたる所以である。
1999年に地平線に別れを告げた彼らが、奇跡の再結成&来日を果たしたのが2010年。それから10年後に予定されていた再々結成はパンデミックによって延期されたが、3年後の昨日、ついにペイヴメントが東京ドームシティホールのステージに着陸した。
気がつけば解散から最初の再結成までの期間よりも長い13年の月日が流れ、その間に彼らの先輩であるソニック・ユースは解散し、盟友シルヴァー・ジューズのデヴィッド・バーマンはこの世を去り、前回の会場だった新木場スタジオ・コーストは無くなった。しかし目の前にあったのは、13年前と変わらないペイヴメントの5人の姿だ。変則チューニングのギターをニヒルに弾きこなし、セーターを脱いだだけで会場をどよめかせるスティーヴン・マルクマスに、「Kennel District」や「Painted Soldiers」といった持ち曲でパンキッシュなヴォーカルを聴かせるスパイラル・ステアーズ。ヒゲメガネにベストというダンディな出で立ちでバンドの屋台骨を支えるドラマーのスティーヴ・ウェストがマルチ奏者のボブ・ナスタノヴィッチに絡まれるのを見ながら、ニコニコと笑顔を浮かべるベースのマーク・アイボルド。いや、正確に言えば、少しは変わったのかもしれない。メンバーは全員相応に歳を取り、シングルのB面曲だった「Harness Your Hopes」が2020年にTikTokで突然のバイラル・ヒットを記録し、ボブは競馬好きが高じて馬主になっていた。だけど彼らが揃った時に醸し出される空気感は、今も当時のままなのだ。
もちろん新機軸もある。ザ・マインダーズ〜ワイルド・フラッグのメンバーだったレベッカ・コールがサポート・キーボーディストとして加わったことによって、これまであまり演奏できなかった曲もレパートリーに加わり、もともと自由な存在だったボブが、鎖を解かれた狂犬のように、ステージを所狭しと暴れ回る。「We Dance」でバレエ・ダンサーのように華麗に舞い、「Unfair」で絶叫し、機材トラブルの最中に珍妙な縦笛を吹いて場を和ませる彼は、間違いなくこの日のMVPだった。
ライヴの終盤、スパイラル・ステアーズが「前回ここに来た時は、a-haの後に演奏したんだ」とサマーソニック出演時のエピソードを披露すると、マルクマスが即興で彼らのヒット曲「Take On Me」のフレーズを弾き始める一幕があった。この2組にはどちらもエコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」をカバーしているという共通点があるが、まさにここ東京ドームシティホールで予定されていたa-haの来日公演が延期のうえ中止され、ペイヴメントがそのステージに立っているということに、運命のいたずらを感じずにはいられない。
この日演奏されたのは全部で28曲。実に2時間に及ぶライヴだったが、それでも今回の再々結成ツアーで演奏されている曲の、ほんの半分に過ぎない。日替わりのセットリストで知られる彼らが、続く東京、大阪公演でどんな名曲を披露してくれるのか楽しみは尽きないが、ペイヴメントとはプログラミング化された世界に映し出されたエラー・メッセージであり、10年おきに現れては、「何かがおかしいようです」という、忘れていたことを思い出させてくれるのだ。
Text by 清水祐也(Monchicon!)
USオルタナ、ローファイ・シーンを代表する伝説的バンド、ペイヴメントの2010年以来となる13年ぶりとなる単独来日ツアー開催中。会場では今回の来日を記念して1997年のヨーロッパ・ツアーの音源を収録したライヴ作品『Live Europaturnen MCMXCVII』2タイトルが初めてカラー盤として再発決定。パープル盤は1997年4月11日に行われたロンドン公演の模様を収録し、2008年にリリースされた『Brighten The Corners: Nicene Creedence Ed』の特典として付属。そしてオレンジ盤は1997年8月15日にドイツ公演の模様を収録し、2009年のレコードストアデイで限定発売されたもので、それぞれ中古市場でも高値で取引されているレア・アイテム。ペイヴメントのファンは是非会場に足を運んで手に入れて欲しい。
PAVEMENT JAPAN TOUR 2023
東京公演
2023年 2月16日(木) TOKYO DOME CITY HALL
Support Act:ミツメ
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET SS 席¥9,500 S 席¥8,500(税込/別途 1 ドリンク)
※未就学児入場不可
当日券販売18:00〜
<問>クリエイティブマン 03-3499-6669
大阪 公演
2023年 2月18日(土) なんばHatch
OPEN 17:00/ START 18:00
TICKET スタンディング¥8,500 2F 指定¥9,500(税込/別途 1 ドリンク)
※未就学児入場不可
前売りチケット発売中
<問>キョードーインフォメーション 0570-200-888