Photo by Kazumichi Kokei
Franz Ferdinand @ TOKYO GARDEN THEATER 11/28 (MON)
フランツ・フェルディナンドが4年ぶりに日本に還ってきた。初来日から18年、彼らは2000年代デビューのUKバンドの中でも日本へのコミットがずば抜けて高いバンドで、コンスタントに来日公演を重ねながら堅固なファンベースを築いてきた。
そんなフランツにとって2020年代初の来日公演となった今回は、大きく二つの意義を持っていたと言える。一つはバンド初のベスト盤『Hits To The Head』を引っさげての来日で、各アルバムから満遍なく代表曲がセレクトされた鉄板のセットが用意されていたこと。もう一つには、ドラマーのオードリー・テイト加入後の初めての来日となったこと。ニック・マッカーシー脱退後のディーノ・バルドー(G)、ジュリアン・コリー(Key&G)の加入(2017年)がフランツの第2形態だったとしたら、ポール・トムソン脱退後のオードリーの加入(2021年)を経た現在の彼らは言わば第3形態だ。つまり、今回の来日はフランツ・フェルディナンドのベスト・ヒット・ライブとしての集大成的モードと、第3形態としての最新モードの両方が問われるステージだったのだ。
結論から言えば、彼らは私たちが愛してやまないフランツらしさを寸分も損なうことないまま、見事に進化を遂げていた。現在の彼らが最強の状態であると証明するステージだった。ステージを覆う白い幕にメンバーのシルエットがストロボで浮かび上がる、モダンアート的演出のオープニングから早くもフランツイズムが炸裂、白幕が落ちると同時に大歓声が巻き起こる。踊れる、歌える、多幸感が際限なく高まっていく、そんなノンストップのパーティーがスタートだ。
前半は“The Dark of the Matinée”や“Right Action”といったリズミカルなポスト・パンク・チューンを用いてエンジンを温めていく流れだったが、そこで早くもバンド・アンサンブルの変化に気づかされた。予想通りキーパーソンはオードリーだ。彼女の鋭くパンクチュアルなドラミングによってお馴染みのナンバーの数々が改めてタイトに絞り込まれ、次々にリフレッシュされていくのを感じる。ディーノとジュリアンの加入で音が分厚くなり、アンサンブルが拡大に転じたのが2018年の前回来日だったとしたら、今回はそれを再び凝縮するようなプレイだったのだ。
そして凝縮されたフランツ・サウンドは、中盤の“Do You Want To”を合図に一気に疾走し始める。一曲の中で加速と減速を目まぐるしく繰り返すのがフランツ・サウンドの醍醐味だが、その彼らの呼吸にオーディエンスが完全に一体化したのが“Do You Want To”以降で、こうなってくると何をやっても面白いくらいにハマる。ファンキーでディスコテックなアレンジの“Lucid Dreams”や、未だかつてなくフリーキーな“Michael”、ブリッジでオーディエンスが一斉にジャンプしてアリーナが揺れに揺れた“Take Me Out”など矢継ぎ早にアンセムが投下され、会場全体がまさにダンスフロアと化していく。
お得意の開脚ジャンプといい、高く蹴り上げる足といい、身体のキレが18年前から全く変わらないアレックスのショウマンシップも相変わらず最高だ。ジュリアンとディーノも華のあるプレイヤーで、相変わらずシャイなボブ(B)も含めてフロントの4人がお立ち台(そう、ステージにお立ち台があるのです)でポーズをキメるたびに、どうしようもなく楽しくなってしまう。そう、彼らのライブは演奏スキルのみで圧倒するものではなく、どこまでもフレンドリーでサービス精神旺盛なエンターテイメントの場でもある。踊れて、歌えて、時に笑えて、最高の笑顔が溢れる瞬間もある、それがフランツ・フェルディナンドのライブの醍醐味なのだ。ラストは全員でドラムやパーカッションをブチ叩く恒例のカオスに突入する“Outsiders”で、熱狂のピークで本編の幕は閉じた。
アンコールの1曲目はオードリー加入後にリリースされた新曲“Billy Goodbye”で、そこからデビュー曲“Darts of Pleasure”へと一気に遡る新旧メドレーも、フランツの集大成的モードと最新モードの融合というこの日のテーマを象徴する流れだったんじゃないだろうか。フィナーレはNetflixの人気アニメシリーズ『サイバーパンク エッジランナーズ』のOPに起用され、目下リバイバル・ヒット中の“This Fire”で、これがまた高速で目まぐるしくスクラップ&ビルドを繰り返すような攻めたアレンジだ。リバイバルしている今だからこそむしろ懐メロ化を拒絶し、“This Fire”の色褪せない斬新さを際立たせていく、そんな彼らのプライドを感じるプレイだったと思う。
「一人残らず踊らせたい」という結成以来の彼らのバンド哲学は、今なお不変だった。彼らがそれを信じて追い求め続けるかぎり、私たちファンも全力でフランツ・フェルディナンドと共に踊り続けるだろう。そう確信できた18年目の一夜だった。
Text by 粉川しの
【公演情報】
当日券:大阪 11/30(水)18:00〜会場にて販売
1Fスタンディングのみ ¥9,500
https://smash-jpn.com/ff2022/
また、来日を記念し、サイン入りアートカードをプレゼント!
応募方法
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https://twitter.com/beatink_jp/status/1597427631301234688?s=20&t=WlD8W4OxNELwC9t5MsvekQ
Franz Ferdinand @ TOKYO GARDEN THEATER 11/28 (MON)
フランツ・フェルディナンドが4年ぶりに日本に還ってきた。初来日から18年、彼らは2000年代デビューのUKバンドの中でも日本へのコミットがずば抜けて高いバンドで、コンスタントに来日公演を重ねながら堅固なファンベースを築いてきた。
そんなフランツにとって2020年代初の来日公演となった今回は、大きく二つの意義を持っていたと言える。一つはバンド初のベスト盤『Hits To The Head』を引っさげての来日で、各アルバムから満遍なく代表曲がセレクトされた鉄板のセットが用意されていたこと。もう一つには、ドラマーのオードリー・テイト加入後の初めての来日となったこと。ニック・マッカーシー脱退後のディーノ・バルドー(G)、ジュリアン・コリー(Key&G)の加入(2017年)がフランツの第2形態だったとしたら、ポール・トムソン脱退後のオードリーの加入(2021年)を経た現在の彼らは言わば第3形態だ。つまり、今回の来日はフランツ・フェルディナンドのベスト・ヒット・ライブとしての集大成的モードと、第3形態としての最新モードの両方が問われるステージだったのだ。
結論から言えば、彼らは私たちが愛してやまないフランツらしさを寸分も損なうことないまま、見事に進化を遂げていた。現在の彼らが最強の状態であると証明するステージだった。ステージを覆う白い幕にメンバーのシルエットがストロボで浮かび上がる、モダンアート的演出のオープニングから早くもフランツイズムが炸裂、白幕が落ちると同時に大歓声が巻き起こる。踊れる、歌える、多幸感が際限なく高まっていく、そんなノンストップのパーティーがスタートだ。
前半は“The Dark of the Matinée”や“Right Action”といったリズミカルなポスト・パンク・チューンを用いてエンジンを温めていく流れだったが、そこで早くもバンド・アンサンブルの変化に気づかされた。予想通りキーパーソンはオードリーだ。彼女の鋭くパンクチュアルなドラミングによってお馴染みのナンバーの数々が改めてタイトに絞り込まれ、次々にリフレッシュされていくのを感じる。ディーノとジュリアンの加入で音が分厚くなり、アンサンブルが拡大に転じたのが2018年の前回来日だったとしたら、今回はそれを再び凝縮するようなプレイだったのだ。
そして凝縮されたフランツ・サウンドは、中盤の“Do You Want To”を合図に一気に疾走し始める。一曲の中で加速と減速を目まぐるしく繰り返すのがフランツ・サウンドの醍醐味だが、その彼らの呼吸にオーディエンスが完全に一体化したのが“Do You Want To”以降で、こうなってくると何をやっても面白いくらいにハマる。ファンキーでディスコテックなアレンジの“Lucid Dreams”や、未だかつてなくフリーキーな“Michael”、ブリッジでオーディエンスが一斉にジャンプしてアリーナが揺れに揺れた“Take Me Out”など矢継ぎ早にアンセムが投下され、会場全体がまさにダンスフロアと化していく。
お得意の開脚ジャンプといい、高く蹴り上げる足といい、身体のキレが18年前から全く変わらないアレックスのショウマンシップも相変わらず最高だ。ジュリアンとディーノも華のあるプレイヤーで、相変わらずシャイなボブ(B)も含めてフロントの4人がお立ち台(そう、ステージにお立ち台があるのです)でポーズをキメるたびに、どうしようもなく楽しくなってしまう。そう、彼らのライブは演奏スキルのみで圧倒するものではなく、どこまでもフレンドリーでサービス精神旺盛なエンターテイメントの場でもある。踊れて、歌えて、時に笑えて、最高の笑顔が溢れる瞬間もある、それがフランツ・フェルディナンドのライブの醍醐味なのだ。ラストは全員でドラムやパーカッションをブチ叩く恒例のカオスに突入する“Outsiders”で、熱狂のピークで本編の幕は閉じた。
アンコールの1曲目はオードリー加入後にリリースされた新曲“Billy Goodbye”で、そこからデビュー曲“Darts of Pleasure”へと一気に遡る新旧メドレーも、フランツの集大成的モードと最新モードの融合というこの日のテーマを象徴する流れだったんじゃないだろうか。フィナーレはNetflixの人気アニメシリーズ『サイバーパンク エッジランナーズ』のOPに起用され、目下リバイバル・ヒット中の“This Fire”で、これがまた高速で目まぐるしくスクラップ&ビルドを繰り返すような攻めたアレンジだ。リバイバルしている今だからこそむしろ懐メロ化を拒絶し、“This Fire”の色褪せない斬新さを際立たせていく、そんな彼らのプライドを感じるプレイだったと思う。
「一人残らず踊らせたい」という結成以来の彼らのバンド哲学は、今なお不変だった。彼らがそれを信じて追い求め続けるかぎり、私たちファンも全力でフランツ・フェルディナンドと共に踊り続けるだろう。そう確信できた18年目の一夜だった。
Text by 粉川しの
【公演情報】
当日券:大阪 11/30(水)18:00〜会場にて販売
1Fスタンディングのみ ¥9,500
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また、来日を記念し、サイン入りアートカードをプレゼント!
応募方法
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