• HOME
  • NEWS
  • KELELA / その神聖ながらもキュートで慈愛に満ちた空間では誰もが祝福されていた。ケレラのライブレポートが公開!
KELELA / その神聖ながらもキュートで慈愛に満ちた空間では誰もが祝福されていた。ケレラのライブレポートが公開!

2023.09.07

KELELA / その神聖ながらもキュートで慈愛に満ちた空間では誰もが祝福されていた。ケレラのライブレポートが公開!

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • LINE
KELELA / その神聖ながらもキュートで慈愛に満ちた空間では誰もが祝福されていた。ケレラのライブレポートが公開!

 ワシントンDC 出身で現在はLAを拠点に活動するR&Bアーティストのケレラが、「SUMMER SONIC 2018」以来5年ぶりとなる来日公演を神田スクエアホールにて行った。ケレラは今年2月にフルアルバムとしては6年ぶりとなった2ndアルバム『Raven』をリリース。今回はそれに伴「RAVE:N TOUR」と題したツアーの来日公演である。

 長く続いた8月の激烈な暑さが束の間過ぎ去ったような穏やかな夜。フロアで待ち構えるファン達は人種も国籍も性別もバラバラだ。開演前はアンビエントからアップビートなラップ、レゲトンビートのインスト曲が流れ、ケレラを待ちわびる多様なオーディエンスは今か今かと身体を揺らす。予定されていた開演時間から20分後、BGMがフェードアウトし、フロアからは歓声と拍手が巻き起こる。しかし、何事もなかったかのようにBGMが元の音量に戻ると、まさかのフェイントにフロアは力の抜けた笑い声に包まれ、オーディエンスはさらに焦らされる。そもそも“kelalien”と呼ばれるケレラのファンは、各メディアで大絶賛された2017年の1stアルバム『Take Me Apart』から6年もアルバムを待っていた。しかも本来この公演は1週間前の木曜日に開催されるはずだったが、「不測の事態」により9月初週の日曜に延期されたという経緯もある。それに比べれば20分など大した時間ではない。

 さらに5分経過した19時25分、ついに客電が落ちると、『Raven』の冒頭を飾る「Washed Away」の清涼なサウンドが一気に空気を浄化する。ケレラはステージ右袖から登場。繊細ながらも空間の隅々まで満たすような力強い声が会場に響き渡り、一夜限りのパーティーが始まった。今回は最新作がメインながらも、2013年のデビューミックステープ『Cut 4 Me』や2015年のEP『Hallucinogen』からの楽曲も織り交ぜた豪華なセットリストであった。しかもその多くはリミックスが施されたもので、新旧問わずレイヴ仕様の新たな姿を与えられていた。「Washed Away」のアウトロはBPM170ほどのドラムンベースに作り変えられ、そのまま「Happy Ending」と「On The Run」に繋げることでフロアを一気に暖めた。続く「Enermy」は10年前の曲ながらも、「水」をテーマにしたという最新作のモードに合わせた滑らかなベース音が心地良い。しばらく聴き入っていると、突如として大胆なスライドベースが特徴的なドリルビートに切り替わり、度肝を抜かれる。それでも原曲と同じメロディで歌いこなしていたのは驚くべきことだった。「この空間をダンスで満たして!」と言った後、アルバムの中でも人気の高い「Contact」をダビーなビートで披露。コーラス部分の〝Oh, it's a sauna, here if you wanna〟という歌詞ではマイクをこちらに向け、オーディエンスは盛大に合唱で応えた。曲間のMCで、これまでの作品でも欠かさず発表してきたアルバムのリミックスバージョンを今回も制作中であることが明かされた。原曲からは想像できないほど複雑なリズムに生まれ変わった「Closure」や、同じく原曲のイメージとはかけ離れたトランシーでクラブバンガーな仕様の「Sorbet」(セットリストには「AFRO TRANCE」とあったのも納得のサウンド)は特に素晴らしい。

 この日のケレラは胸元に大きな丸い鏡を身に着けていた。ペンダントにしてはあまりに巨大なその鏡は、水面が太陽の光を跳ね返すように照明を反射し、時折目が開けられないほど鋭い光線がフロアに注がれていた。その姿は私たちに光を恵んでくれる女神のよう。本編を締めくくる「Enough For Love」は美しくゴージャスで忘れ難いひとときだった。

 アンコールはこの日一番強烈な低音とともに「The High」と「Cut 4 Me」を披露。女神は頭の先が見えるほど深いお辞儀をして、去り際に両手でハートを作った。私たちはステージ上でたった一人佇むケレラの姿を確かに見た。その神聖ながらもキュートで慈愛に満ちた空間では誰もが祝福されていた。

Text by もこみ

NEWS

2024.11.21
2024.11.21
2024.11.21
2024.11.21
2024.11.20
2024.11.20
2024.11.19
2024.11.19
2024.11.18
2024.11.15