NYインディー・シーンにおいて、今まさに円熟と黄金期を迎えているプロデューサー/シンガー・ソングライター、エラード・ネグロが最新アルバム『Far In』を本日リリース。ヒップホップ、トロピカリズモ、エレクトロニカを甘いサイケデリアで醸造して自身のスタイルをさらに追求した同作の日本盤CD、または輸入盤LPを購入すると先着で盟友デヴェンドラ・バンハートも参加したニール・ヤングのカバー「Lotta Love」を収録したスクエア型ソノシート、さらに日本盤CDにはタロットカード、輸入盤LPにはポストカードと大判ステッカーを先着でプレゼントされる。また、アルバムからの4thシングル「There Must Be A Song Like You」のMVも公開中。

Helado Negro - There Must Be A Song Like You


エラード・ネグロが時折更新するSpotifyのプレイリスト《Day is clear, Night is here》がとても好きだ。昼と夜の対比を感じさせるタイトルが印象的なこのプレイリストにはこれまでにもう600曲近くが放り込まれていて、新旧様々ながら彼のフェイヴァリット曲をチェックすることができる。20日ほど前には、カエターノ・ヴェローゾやアルカ、先ごろ4ADとの契約を発表したAnjimileなどの新曲が追加されているし、今年夏には坂本慎太郎や冥丁、サム・プレコップやムーア・マザーも彼のお気に入りだったようだ。このプレイリストを繰り返していると、プレフューズ73/サヴァス+サヴァラスのギレルモ・スコット・ヘレンとの交流が伝わるより前、彼がまだ謎多きクリエイターだった頃には想像しえなかった音楽性の裾野の広さに感動させられるばかりか、このリスナーとしての邪気のない好奇心が、ハイブリッドなのに豊かな情緒を湛えた近年のソロ作に、一聴するとオブスキュアで優美な、でもシャープな意志の強さを確実に与えているということに気づかされるのである。『Far In』という今年屈指の1枚と言っていいエラード・ネグロのニュー・アルバムは、昼と夜とが音楽の深い靄の中に微睡むように混在する、彼自身のこうした音への希求の上にきっと成り立っている。そして、私は本作を聴いて、なぜかジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観たくなった。

岡村詩野(音楽評論家/TURN編集長)


様々な音楽語彙が溶け合うことによって芳醇を極めた音楽というのは、レシピの複雑さに比して、意外にもさっぱりした聴き口になるものなのだ。エラード・ネグロの最新作『Far In』は、高品位のジャンルレスポップスとしてのそうした美質を十二分に備えた傑作だ。“Far Out”でなくて、“Far In”。自らの「内側」をはるか遠くまでじっと探索することで、「外側」へとつながっていく。彼と同じく、この間の疫病禍で内省を強いられた多く人々にとって、この音楽は、栄養に満ちたスープのように優しく響くだろう。もちろん、食欲をそそるスパイスもふんだんに用いられていますヨ。

柴崎祐二(音楽評論家)


フロリダのエクアドル移民一家に生まれたエラード・ネグロ。トロピカルでエレクトロニックでフォーキーでオルタナティヴ。そんなハイブリッドな音楽性に移民文化を感じさせて、多様性が重要になっている2020年代を象徴するモダン・アメリカーナみたいな趣も。最新作『Far In』では、ダンサブルな要素が増して夢見心地のスウィートさが全開。いつか、ハリー細野と共演して欲しい。

村尾泰郎(音楽/映画ライター)

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