昨年、最新作『In Times New Roman...』をリリースしたQueens of the Stone Age(以下QOTSA)が、待望の再来日を果たした。前作『Villains』を2017年にリリースした際には、同年にフジロック、翌2018年にサマーソニック出演+単独公演と続けて来てくれていたので、6年ぶりとなる新作でも早々に日本公演が実現したのは、本当に嬉しい。
7日に行われたTOKYO DOME CITY HALLでのライヴは、「Regular John」でスタート。2022年にオリジナル仕様でリイシューされたデビュー・アルバムの冒頭を飾るナンバーだ。彼らの歴史が始まったばかりの頃の曲が、中心メンバーのジョシュ・ホーミ(Vo/G)を筆頭に、トロイ・ヴァン・リューウェン(G/Vo)、ディーン・フェルティ ータ(G/Key)、マイケル・シューマン(B/Vo)、ジョン・セオドア(Dr)という現在の編成で再現されるのを体感するだけで、なんだか胸が熱くなってくる。十分に温まったオーディエンスに向けて、間髪を入れず人気曲の「No One Knows」がブチ込まれると、たちまちフロアは沸騰したかのような興奮に包まれた。その後しばらくは、最新アルバムからの曲に、前々作『...Like Clockwork』を混ぜ込みながら披露していく流れが続き、グイグイくるグルーヴが刺激的な 「Smooth Sailing」や、基本のビートと独特の絡み方をする3拍子系のギターリフ(ライヴではトロイがスライドバーをつけたまま、ずっと弾いていた)が印象的な 「Time & Place」などが、生演奏でさらに生々しいダイナミズムを発揮していく。
中盤のハイライトを担った、ダンサブルでキャッチーなヒット・シングル 「The Way You Used to Do」では、キックドラムが壊れてしまうトラブルが発生。しかしジョシュは慌てるような様子は一切なく、「何か適当にサントラ風なの弾いててよ」と無茶ぶり(?)すると、トロイが007のテーマをさらっと披露してみせる。それを受けてのメンバー紹介コーナーでは、「トロイ・ヴァン・リューウェン、ダブルオー5と1/2」とかジョークにする余裕っぷり。そうこうしてる間に、ドラムはしっかりと修理されたが、2013年に加入以来、すっかりQOTSAに馴染んだ感のあるジョン・セオドアの、ドラマーとしてのパワーを改めて実感させられたりもした。マイキーのバキバキしたベースと合わせて、リズム隊の低音がズドンと響く上に、ギターのアンサンブルやヴォーカルワークが駆け巡る音響に関しても素晴らしかったと思う。
また、この日チケットが完売したスタンディングアリーナには熱心なファンも多かったようで、いわゆる「ディープカッツ」な選曲と言える 「Into the Hollow」や、「I Think I Lost My Headache」にも、ちゃんと反応があったことも頼もしかった。そんな観衆に、ジョシュはたびたび「Have a good time?」とMCで問いかけていたが、「Make It Wit Chu」で女性に合唱させる場面で、野郎どもも歌ってしまった時の微笑ましいやり取りは、場内を満たす親密な空気が極まったシーンだったと言っていいだろう。
アップテンポの「Little Sister」で本編を締め括った後、アンコールでは「Sick, Sick, Sick」〜「Go With the Flow」〜「A Song for the Dead」という必殺の流れで、最高潮のままコンサートは終了した。
ラストの「A Song for the Dead」は、レコードではデイヴ・グロールが担当していた強力なドラムを、ここではセオドアが見事に叩きこなしてみせる。また、オリジナル版でリード・ヴォーカルを歌っているマーク・ラネガンが2022年に急逝したことを考えると、タイトルそのままに追悼の意味合いも思い浮かぶものの、重苦しいムードを放つ曲ながら、基本的にはクールなトロイが、ここぞとばかり激しいアクションを見せたりして、楽しさに満ちたショウの最後に相応しいものだった。
日中の取材で対面したジョシュからは、仲間の死や自身の闘病など、多くの苦難に見舞われた近年の実人生を経て、どこか達観しつつも決して老成はしないような、何か覚悟が決まったような不思議な貫禄が伝わってきた。そうして得た心情が、ステージでの朗らかさ、オーディエンスへの態度にも現れていたと思う。QOTSAが、これからも現役最高峰のロック・バンドとして活躍していく未来を確信する。
Text by 鈴木喜之
Photo by 古渓 一道
昨年、最新作『In Times New Roman...』をリリースしたQueens of the Stone Age(以下QOTSA)が、待望の再来日を果たした。前作『Villains』を2017年にリリースした際には、同年にフジロック、翌2018年にサマーソニック出演+単独公演と続けて来てくれていたので、6年ぶりとなる新作でも早々に日本公演が実現したのは、本当に嬉しい。
7日に行われたTOKYO DOME CITY HALLでのライヴは、「Regular John」でスタート。2022年にオリジナル仕様でリイシューされたデビュー・アルバムの冒頭を飾るナンバーだ。彼らの歴史が始まったばかりの頃の曲が、中心メンバーのジョシュ・ホーミ(Vo/G)を筆頭に、トロイ・ヴァン・リューウェン(G/Vo)、ディーン・フェルティ ータ(G/Key)、マイケル・シューマン(B/Vo)、ジョン・セオドア(Dr)という現在の編成で再現されるのを体感するだけで、なんだか胸が熱くなってくる。十分に温まったオーディエンスに向けて、間髪を入れず人気曲の「No One Knows」がブチ込まれると、たちまちフロアは沸騰したかのような興奮に包まれた。その後しばらくは、最新アルバムからの曲に、前々作『...Like Clockwork』を混ぜ込みながら披露していく流れが続き、グイグイくるグルーヴが刺激的な 「Smooth Sailing」や、基本のビートと独特の絡み方をする3拍子系のギターリフ(ライヴではトロイがスライドバーをつけたまま、ずっと弾いていた)が印象的な 「Time & Place」などが、生演奏でさらに生々しいダイナミズムを発揮していく。
中盤のハイライトを担った、ダンサブルでキャッチーなヒット・シングル 「The Way You Used to Do」では、キックドラムが壊れてしまうトラブルが発生。しかしジョシュは慌てるような様子は一切なく、「何か適当にサントラ風なの弾いててよ」と無茶ぶり(?)すると、トロイが007のテーマをさらっと披露してみせる。それを受けてのメンバー紹介コーナーでは、「トロイ・ヴァン・リューウェン、ダブルオー5と1/2」とかジョークにする余裕っぷり。そうこうしてる間に、ドラムはしっかりと修理されたが、2013年に加入以来、すっかりQOTSAに馴染んだ感のあるジョン・セオドアの、ドラマーとしてのパワーを改めて実感させられたりもした。マイキーのバキバキしたベースと合わせて、リズム隊の低音がズドンと響く上に、ギターのアンサンブルやヴォーカルワークが駆け巡る音響に関しても素晴らしかったと思う。
また、この日チケットが完売したスタンディングアリーナには熱心なファンも多かったようで、いわゆる「ディープカッツ」な選曲と言える 「Into the Hollow」や、「I Think I Lost My Headache」にも、ちゃんと反応があったことも頼もしかった。そんな観衆に、ジョシュはたびたび「Have a good time?」とMCで問いかけていたが、「Make It Wit Chu」で女性に合唱させる場面で、野郎どもも歌ってしまった時の微笑ましいやり取りは、場内を満たす親密な空気が極まったシーンだったと言っていいだろう。
アップテンポの「Little Sister」で本編を締め括った後、アンコールでは「Sick, Sick, Sick」〜「Go With the Flow」〜「A Song for the Dead」という必殺の流れで、最高潮のままコンサートは終了した。
ラストの「A Song for the Dead」は、レコードではデイヴ・グロールが担当していた強力なドラムを、ここではセオドアが見事に叩きこなしてみせる。また、オリジナル版でリード・ヴォーカルを歌っているマーク・ラネガンが2022年に急逝したことを考えると、タイトルそのままに追悼の意味合いも思い浮かぶものの、重苦しいムードを放つ曲ながら、基本的にはクールなトロイが、ここぞとばかり激しいアクションを見せたりして、楽しさに満ちたショウの最後に相応しいものだった。
日中の取材で対面したジョシュからは、仲間の死や自身の闘病など、多くの苦難に見舞われた近年の実人生を経て、どこか達観しつつも決して老成はしないような、何か覚悟が決まったような不思議な貫禄が伝わってきた。そうして得た心情が、ステージでの朗らかさ、オーディエンスへの態度にも現れていたと思う。QOTSAが、これからも現役最高峰のロック・バンドとして活躍していく未来を確信する。
Text by 鈴木喜之
Photo by 古渓 一道