Photo by Tadamasa Iguchi
BONOBO DJ SET @O-EAST 1/15(SUN)
16時からスタートしたこの日のイベント、フロア前方にDJブースを床置きにしたセッティングで、そのまわりをぐるりとオーディエンスが取り囲んでいる。18時にボノボことサイモン・グリーンがブースに現れると大きな歓声が起こる。流麗さとほの暗さを兼ね備えたスタイルで日曜夕方のまったりとした空気をかき消したサポート・アクトのLittle Dead Girlからバトンタッチし、「Bambro Koyo Ganda」の神秘的なイントロが鳴り響く。続いてベースラインがうねる「Rosewood」、アトモスフェリックな「Linked」と彼の楽曲のなかでもとりわけダンスフロアへの愛情が伝わってくるナンバーの連続に、フロアはいきなりピークタイムのような盛り上がりをみせる。
セットは、ラテンな色彩を持つクロスオーバーの名曲である&ME「The Rapture Pt.2」などを挟み、祝祭感を次第に強めていく。自身のレーベル OUTLIERから2022年にリリースしたトライバルな「Defender」、「Cirrus」のカリンバが鳴り響くとフロアの熱がさらに上昇する。彼のシグネチャーと言える、民族的な音色やヴォーカルのチョップが重なる民族的なグルーヴ、そして深みのあるテクスチャーをメインに、ときおりテックトランス系のプロダクションが挿入されるのがアクセントとなり、なんとも心憎い。
ジョイ・オービソンの「Pinky Ring」、ミックスシリーズ『fabric presents』でもセレクトしたPoté『Jacquot (Waters Of Praslin)』、Xpansionsの90’sヒット「Move Your Body」と、時代を超越してトラックを繋いでいく抜群の審美眼と構成力に圧倒されるし、決して派手なEQ使いをするわけではないけれど、絶妙なターンテーブルさばきにも目が離せない。体を揺らしながらときに拳を振り上げてのプレイ姿には、超満員のオーディエンスとの一体感を十二分に楽しんでいるのがみてとれる。ときに2000年代EDMのような大仰さを感じる場面もあり、ストイックに音のディティールを磨いていくイメージの強い彼の意外な一面と言っていいだろう。もちろん、「Age Of Phase」のヴォーカル・サンプルが聞こえてきたときの高揚感は筆舌に尽くし難いし、「Kerala」のスケールの大きさ、疾走感に満ちた「ATK」と、ボノボの代表的トラックが次々に飛び出してくる流れに魅了される。
2時間半に及ぶセット本編ラストにプレイしたのは、ジョージ・フィッツジェラルドとの共作「Outgrown」。明るさとメランコリー、シンプルさと深みという相反する要素を内包したタッチに胸を掻き立てられる。DJブースに乗り出さんばかりのオーディエンスと握手を交わし、「ありがとう、また会いましょう!」というMCを残しDJブースを去ったグリーンだが、アンコールを求める拍手が止まらぬなか、再び登場。2022年の作品ながら既にクラシックの風格漂う「Closer」をかけ、クラウドを歓喜の渦に巻き込む。最後は「Sepien」の、スピード感のなかにどこか静けさを伴うムードでこの夜を締めくくった。
終演後のフロアからはため息が漏れるとともに、オーディエンスが「すごい!」「ジーニアス!」と口々に感嘆の声を漏らす。ボノボのサウンドの魅力が、プリミティブと洗練の両方から生みだす多幸感にあることをあらためて確認できた。フジロックをはじめとした大所帯のバンドセットでの強烈な開放感も格別だが、ダンスフロアへ向けたと公言するアルバム『Fragments』の繊細なサウンドのレイヤーをよりインティメイトなモードで体感することができた、忘れがたい夜になった。
Text by 駒井憲嗣
【商品情報】
ATK T-SHIRT ¥4,500 (税込)
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13210
BONOBO DJ SET @O-EAST 1/15(SUN)
16時からスタートしたこの日のイベント、フロア前方にDJブースを床置きにしたセッティングで、そのまわりをぐるりとオーディエンスが取り囲んでいる。18時にボノボことサイモン・グリーンがブースに現れると大きな歓声が起こる。流麗さとほの暗さを兼ね備えたスタイルで日曜夕方のまったりとした空気をかき消したサポート・アクトのLittle Dead Girlからバトンタッチし、「Bambro Koyo Ganda」の神秘的なイントロが鳴り響く。続いてベースラインがうねる「Rosewood」、アトモスフェリックな「Linked」と彼の楽曲のなかでもとりわけダンスフロアへの愛情が伝わってくるナンバーの連続に、フロアはいきなりピークタイムのような盛り上がりをみせる。
セットは、ラテンな色彩を持つクロスオーバーの名曲である&ME「The Rapture Pt.2」などを挟み、祝祭感を次第に強めていく。自身のレーベル OUTLIERから2022年にリリースしたトライバルな「Defender」、「Cirrus」のカリンバが鳴り響くとフロアの熱がさらに上昇する。彼のシグネチャーと言える、民族的な音色やヴォーカルのチョップが重なる民族的なグルーヴ、そして深みのあるテクスチャーをメインに、ときおりテックトランス系のプロダクションが挿入されるのがアクセントとなり、なんとも心憎い。
ジョイ・オービソンの「Pinky Ring」、ミックスシリーズ『fabric presents』でもセレクトしたPoté『Jacquot (Waters Of Praslin)』、Xpansionsの90’sヒット「Move Your Body」と、時代を超越してトラックを繋いでいく抜群の審美眼と構成力に圧倒されるし、決して派手なEQ使いをするわけではないけれど、絶妙なターンテーブルさばきにも目が離せない。体を揺らしながらときに拳を振り上げてのプレイ姿には、超満員のオーディエンスとの一体感を十二分に楽しんでいるのがみてとれる。ときに2000年代EDMのような大仰さを感じる場面もあり、ストイックに音のディティールを磨いていくイメージの強い彼の意外な一面と言っていいだろう。もちろん、「Age Of Phase」のヴォーカル・サンプルが聞こえてきたときの高揚感は筆舌に尽くし難いし、「Kerala」のスケールの大きさ、疾走感に満ちた「ATK」と、ボノボの代表的トラックが次々に飛び出してくる流れに魅了される。
2時間半に及ぶセット本編ラストにプレイしたのは、ジョージ・フィッツジェラルドとの共作「Outgrown」。明るさとメランコリー、シンプルさと深みという相反する要素を内包したタッチに胸を掻き立てられる。DJブースに乗り出さんばかりのオーディエンスと握手を交わし、「ありがとう、また会いましょう!」というMCを残しDJブースを去ったグリーンだが、アンコールを求める拍手が止まらぬなか、再び登場。2022年の作品ながら既にクラシックの風格漂う「Closer」をかけ、クラウドを歓喜の渦に巻き込む。最後は「Sepien」の、スピード感のなかにどこか静けさを伴うムードでこの夜を締めくくった。
終演後のフロアからはため息が漏れるとともに、オーディエンスが「すごい!」「ジーニアス!」と口々に感嘆の声を漏らす。ボノボのサウンドの魅力が、プリミティブと洗練の両方から生みだす多幸感にあることをあらためて確認できた。フジロックをはじめとした大所帯のバンドセットでの強烈な開放感も格別だが、ダンスフロアへ向けたと公言するアルバム『Fragments』の繊細なサウンドのレイヤーをよりインティメイトなモードで体感することができた、忘れがたい夜になった。
Text by 駒井憲嗣
【商品情報】
ATK T-SHIRT ¥4,500 (税込)
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13210