Snail Mail @ WHITE STAGE 7/30(SAT)
アンニュイでぶっきらぼうな歌声、陽炎のように揺らめくギター、ハーフパンツにローファーというラフな着こなし。リンジー・ジョーダンことスネイル・メイルの一挙一動には、相変わらずオルタナティヴ・ロックの夢が詰まっていた。
WHITE STAGEでその勇姿を見届けながら、驚かされたのはパフォーマーとしての成長ぶりだ。2018年に初来日したとき、当時19歳だったリンジーの演奏は、規格外のポテンシャルを持て余し、やや危ういバランスのうえに成り立っているようにも映った。しかし、昨年発表の2作目『Valentine』で理想的なスケールアップを果たした彼女は、フジロックで堂々たるステージングを披露。同作では大失恋やリハビリ施設での日々についても歌われていたが、人生経験を積んで23歳になった彼女は、すっかり逞しくなっていた。
この日、現場に駆けつけたオーディエンスから、YouTube配信を楽しむ人々の目まで釘付けにしたのが、オアシスの「Live Forever」Tシャツ。リンジーがこよなく愛するバンドとのことで、最初にプレイされた表題曲「Valentine」のアンセミックな高揚感も、彼らに影響されたものかもしれない。激情迸るメロディとともに愛機のジャズマスターがかき鳴らされると、観客も手を挙げて応える。
その後、『Valentine』の収録順どおり2曲目の「Ben Franklin」を演奏したリンジーは、「日本に戻ってこれて嬉しい」とMCで告げたあと、「Glory」では笑みを浮かべてギター・ソロを弾き鳴らす。続く「Speaking Terms」はデビュー作『Lush』収録曲だが、レイ・ブラウン(ds)がパッドを叩きこなすなど、立体感のあるアレンジに生まれ変わっていた。初来日のときは見た目も演奏も頼りなかった彼やアレックス・ベース(b)が、リンジーと同じく大人の顔つきになっていたのは感慨深い。「Automate」もバンドのスキルアップが伝わるナンバーで、前回は不在だったマデリン・マコーマック(g, key)の鍵盤がうまく効いていた。
かたや主役のリンジーは、楽器の音量バランスがずっと気になっていた模様。観客に向けて満面の笑みを振り撒きながら、いざ演奏に入るとイライラを隠せず、ベンジャミン・カウニッツ(g)にチューニングの間違いをツッコむ場面もあった。そこで見せる不機嫌な表情もまた、ギャラガー兄弟譲りであり、90年代オルタナの継承者ならでは。どのように振る舞おうと絵になってしまうあたり、ロックスターの資質を感じずにいられない。
そんな彼女のステージは、9曲目の「Heat Wave」でさらに熱気を帯び、その勢いのまま最高潮まで上り詰めていく。そして、自身の代名詞ともいうべき「Pristine」で完全燃焼すると、リンジーはピースしながら「サンキュー、フジロック!」と言い残して去っていった。
ちなみにステージ袖では、J・マスキス(ダイナソーJr.)がライブをずっと見守っていた。実はこの数時間前に、彼とリンジーによる夢のオルタナ対談が実現しており、Jもその流れで足を運んだのだろう。筆者も取材に立ち会ったが、初対面にもかかわらず、二人のトークは想定外の盛り上がりだった。この記事はRolling Stone Japanのウェブで後日公開予定なのでお楽しみに。
小熊俊哉
セトリ・プレイリスト公開!
アンニュイでぶっきらぼうな歌声、陽炎のように揺らめくギター、ハーフパンツにローファーというラフな着こなし。リンジー・ジョーダンことスネイル・メイルの一挙一動には、相変わらずオルタナティヴ・ロックの夢が詰まっていた。
WHITE STAGEでその勇姿を見届けながら、驚かされたのはパフォーマーとしての成長ぶりだ。2018年に初来日したとき、当時19歳だったリンジーの演奏は、規格外のポテンシャルを持て余し、やや危ういバランスのうえに成り立っているようにも映った。しかし、昨年発表の2作目『Valentine』で理想的なスケールアップを果たした彼女は、フジロックで堂々たるステージングを披露。同作では大失恋やリハビリ施設での日々についても歌われていたが、人生経験を積んで23歳になった彼女は、すっかり逞しくなっていた。
この日、現場に駆けつけたオーディエンスから、YouTube配信を楽しむ人々の目まで釘付けにしたのが、オアシスの「Live Forever」Tシャツ。リンジーがこよなく愛するバンドとのことで、最初にプレイされた表題曲「Valentine」のアンセミックな高揚感も、彼らに影響されたものかもしれない。激情迸るメロディとともに愛機のジャズマスターがかき鳴らされると、観客も手を挙げて応える。
その後、『Valentine』の収録順どおり2曲目の「Ben Franklin」を演奏したリンジーは、「日本に戻ってこれて嬉しい」とMCで告げたあと、「Glory」では笑みを浮かべてギター・ソロを弾き鳴らす。続く「Speaking Terms」はデビュー作『Lush』収録曲だが、レイ・ブラウン(ds)がパッドを叩きこなすなど、立体感のあるアレンジに生まれ変わっていた。初来日のときは見た目も演奏も頼りなかった彼やアレックス・ベース(b)が、リンジーと同じく大人の顔つきになっていたのは感慨深い。「Automate」もバンドのスキルアップが伝わるナンバーで、前回は不在だったマデリン・マコーマック(g, key)の鍵盤がうまく効いていた。
かたや主役のリンジーは、楽器の音量バランスがずっと気になっていた模様。観客に向けて満面の笑みを振り撒きながら、いざ演奏に入るとイライラを隠せず、ベンジャミン・カウニッツ(g)にチューニングの間違いをツッコむ場面もあった。そこで見せる不機嫌な表情もまた、ギャラガー兄弟譲りであり、90年代オルタナの継承者ならでは。どのように振る舞おうと絵になってしまうあたり、ロックスターの資質を感じずにいられない。
そんな彼女のステージは、9曲目の「Heat Wave」でさらに熱気を帯び、その勢いのまま最高潮まで上り詰めていく。そして、自身の代名詞ともいうべき「Pristine」で完全燃焼すると、リンジーはピースしながら「サンキュー、フジロック!」と言い残して去っていった。
ちなみにステージ袖では、J・マスキス(ダイナソーJr.)がライブをずっと見守っていた。実はこの数時間前に、彼とリンジーによる夢のオルタナ対談が実現しており、Jもその流れで足を運んだのだろう。筆者も取材に立ち会ったが、初対面にもかかわらず、二人のトークは想定外の盛り上がりだった。この記事はRolling Stone Japanのウェブで後日公開予定なのでお楽しみに。
小熊俊哉
セトリ・プレイリスト公開!