バイヤーが選ぶ2017年間ベスト

2017.12.28

バイヤーが選ぶ2017年間ベスト

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バイヤーが選ぶ2017年間ベスト

HMV 寺町知秀 氏
(ローソンHMV エンタテイメント商品本部にて洋楽バイヤーを担当)

King Krule - The Ooz
Nero Imai - Return Of Acid King
Sunny & The Sunlinners - Mr Brown Eyed Soul




音楽でも何でも新しい表現に惹かれますが、映画『バス男(ナポレオン・ダイナマイト)』の主人公みたいなルックスにしてドープな歌声の持ち主、アーチー・マーシャルことキング・クルール新作は、この不穏な時代に最も今を感じた1枚。場末のキャバレーで鳴らされるデカダンなロックンロール/ジャズに、ダブステップ以降の音響センスをまとい、古きを鳴らし新しきを響かせた傑作。日本のヒップホップシーンは断然東海勢が面白かったです。その“NEO TOKAI”を代表するクルー、SLUM RCからの刺客NERO IMAI処女作は、スキルフルかつ自由度&中毒性高いラップで遊び倒した、タイトル&ジャケット通りのアシッド・トラップな怪作。“TOKAI DOPENESS”恐るべし。チカーノ・ソウルの雄サニー・オズナー率いる、サニー&ザ・サンライナーズ『MR BROWN EYED SOUL』は、1966~1972年の編集盤ですが、今聴かれるべき素晴らしい音源集。過去の知らなかった音楽に触れて、新しい感覚を得ることがありますが、まさにそういう瞬間が詰まっています。



Tower Records 渋谷店 武田晃 氏
(Tower Records 渋谷店インディロック・バイヤー)

The National - Sleep Well Beast
Cigarettes After Sex - Cigarettes After Sex
Molly Nilsson - Imaginations




2017年を振り返ると個人的には改めてインディロックに立ち返った1年。中でもザ・ナショナルは今年を象徴する1枚。元々大好きなレーベルである〈4AD〉の“耽美”を継承したバンドサウンドはUSバンドながら非常に英国的で妙にしっくりくる。あのバリトンボイスも渋くてかっこいいな~って聴くたびにニンマリ。他にもザ・ウォー・オン・ドラッグス、ファーザー・ジョン・ミスティ、ビッグ・シーフ、アレックスG、ジェイ・ソム辺りとUSインディが豊作だったかなと。そんな中、個人的に歴代でもトップクラスのバンド入りしたのがシガレッツ・アフター・セックス。もうバンド名から完璧!と思い数年前からチェックしてましたがいよいよブレイク、2回の来日公演も最高だったし、アルバムも完璧!前途の耽美系の完成形ともいうべき美しさ。そして、最後に異色だったのがスウェーデンのSSWモリー・ニルソン。グライムス等カナディアンインディとも共振する宅録スタイルの80'sシンセポップは、どこ都会的で今の空気にピッタリ。寒くなってきて最近こればかり。



珍屋 松林弘樹 氏
(珍屋立川2号店 店長)

Spoon - Hot Thoughts
Richard Dawson - Peasant
Pierre Kwenders - MAKANDA at the End of Space, the Beginning of Time




曲構成におけるギターの位相は、一段と進歩したようだ。キックやベースの低音域に工夫を凝らして、オリジナリティーを獲得していたダンス・ミュージックやヒップ・ホップのトラックの影響が、今年は生演奏を志向するバンドやシンガーにも浸透し、音圧競争の面からも無視出来なくなった印象だ。このことは、バンドにおけるサウンド・メイキングのギターの役割にも、面白い変化があったことが伺える。特に、久しぶりのリリースとなったザ・ナショナルやアーケイド・ファイア、ザ・ウォー・オン・ドラッグスは、現代を代表するギタリストをメンバーにしながら、新しいギターの音像を新作で披露した。その音像でいうと、ギターを抱えながら歌うカート・ヴァイルとコートニー・バーネットのデュオ作品は、進化とは違った観点でラフに楽しめるアルバムだった。バンド・サウンドにおける各楽器の位相を、新しい次元に押し上げたと思うのは、スプーン『Hot Thoughts』だ。ドラマーのジム・イーノが経営するスタジオ、パブリック・HI-FIでの音作りには、興味が尽きない。



BEAMS RECORDS 廣瀬麻美 氏
(ビームス レコーズ ショップマネージャー兼バイヤー。店頭で接客をしながら、バイイング、販促イベントの企画などを担当しています。)

Floating Points - Reflections - Mojave Desert [CD+DVD]
Visible Cloaks - Reassemblage
Feist - Pleasure




特に印象深かったのは、2015年のエレクトロニック・ミュージックの代名詞的な作品『Elaenia』以来、動向が気になっているフローティング・ポインツによる『Reflections - Mojave Desert 』。バンド編成でのサム・シェパード流の壮大なプログレッシブ・ロックに、ただただ圧倒されました。モハーヴェ砂漠(!)で録音した事が独特の音像を与えていて、それを視覚化したショートフィルムにも感服。早くも次作への期待が高まります。

その一方で、静かにロックするようなSSW物にも惹かれる作品が多数あり、中でもファイスト『Pleasure』は素晴らしかった。円熟味を増した彼女のギター&ヴォーカルが存分に楽しめる1枚です。また、近年のニューエイジ~アンビエント興隆の中でもビジブル・クロークス『Reassemblage』には特に魅了されました。日本のわび・さびに通じるような凛とした美しさを備えたアンビエント・ミュージックです。



diskunion 岩渕亜衣 氏
(ディスクユニオン。インディ・ロック担当。)

The National - Sleep Well Beast
The xx - I See You
Liars - TFCF




音源が作られリスナーの手元に届くまでの過程がリアルタイムかつ透明化してきたように感じられる昨今。アーティストはもちろんのことですが、プロデュースもレーベルもプロモーションも…一つの作品に関わること全て、本物が本気でやらなきゃ評価されない緊張感がより一層漂っていた一年だと思います。売る側としても、あらためて襟を正しつつも、たくさんのその「本物」のリリースを前にとてもやりがいのある楽しい一年でした。
2017年明けてすぐ発売されたジ・エックスエックスは、ロック好きが今聴きたいダンス・ミュージックをスタイリッシュに体現して頭一つ抜け出した感じで、当店でも大ヒット。今思えばそれが楽しい年の幕開けだったなと。毎回正統アメリカン・ロックの良作を出しているものの、ザ・ナショナルの新作が今年広く支持されたのは当初は正直意外でしたが、これも本物志向のリスナーの方々の選眼の確かさなのだなと勉強になったり。ライアーズは個人的にベックの雑食さの流れを汲んでいるバンドだと常々思っているのですが、今年の活動で対比すると、なぜここまで差がついた!(笑)と思ってしまいました…良い意味で!私にとってはずっと愛すべき存在です。



bonjour records 上村真俊 氏
(代官山、新宿、名古屋、福岡にショップを展開するミュージック~カルチャーショップ。)

Sampha - Process
Dawn Richard - Redemption
Mocky - How To Hit And How Hard




2016年に引き続き、SOUL~R&B~HIPHOPシーンが多様な進化を見せた2017年。ボンジュールレコードでもR&B色の強いヴォーカルがヒットアルバムに多く見られました。ピックアップした3タイトルの中でも、ザ・エックスエックス来日ライブで圧巻のフロントアクトを披露したサンファが代表的な例で、ボンジュールレコードでも幅広い層からリアクションを得られました。ピックアップした、ドーン・リチャード以外にも、ケレラ、スザ、ソランジュなど、それぞれ方向性やタッチは違うものの、軒並み好調。さらに系統は全く違いますが、エフケージェーもシルキー+ソウルフルなヴォーカルで新世代R&B感を打ち出して、一気にマス層まで広がった久々のフレンチニューカマー。ちなみに所属レーベルと、まだシングルしかリリースしていない多くの所属アーティスト達は、2018年も引き続き注目。モッキーはそのどれとも被らない全く独自路線の天才肌で、毎度ながら引き出しの多さと、その独特過ぎる感性はチリー・ゴンザレスが認めるのも頷けます。



record shop BIG LOVE 石動丸倫彦 氏
(record shop Big Love エレクトロニック部門バイヤー、三宿WEBにてパーティー「FISH」「CLOWN」オーガナイズ、雑誌「border magazine」執筆等。)

Oneohtrix Point Never - Good Time…Raw
DJ Python - Dulce Compaia
Honey Hahs - OK/Beer Fear





2017年といえば10年以上振りにUKインディ・ロック・シーンが爆発的な盛り上がりを見せ始めた。星の数程いるバンドの中で老舗〈Rough Trade〉がデビューE.P.をリリースした平均11,5歳の三姉妹ハニー・ハーズはその一瞬の輝き以上に今後のUKの真新しさを予見させてくれ素晴らしかった。エレクトロニックはアンビエント気運の中、ハウス・シーンの中にそれをより感じた。NYの寵児アンソニー・ネイプルズに見いだされたDJパイソンのデビューアルバムが格段に良かった。エイフェックス・ツイン的エレクトロニックとレゲトン・ビートが融合し押し寄せる音の波に誰もが癒やされ、浄化される名盤。サウンド・トラックもここ2、3年の流行。ドラマ「Twin Peaks」の新シリーズ等インディのアーティストがメジャーで活躍、レコードとしてそのサントラを手に出来る楽しみはこれまで無かった事。『グッド・タイム』は後のカルト確定の名アウトロー映画。監督ジョシュ・サフディの「映画の曲順でサントラを聴きたい」の一声でカセットとしてサントラの別バージョンが商品化。そのブツとして成熟した輝きは特別だ。



FLAKE RECORDS 和田貴博 氏
(大阪のレコードショップFLAKE RECORDS代表。愛称はDAWA(ダワ)。自主レーベル「FLAKE SOUNDS」を主催し、自主イベントのオーガナイズまで仕事は多岐に渡る。「死ぬまでに行くべき27のレコードストア」にも選出されている。)

Sampha - Process
Aiming For Enrike - Las Napalmas
Jaysom - Everybody Works




2017年はソウルやR&Bの新世代のアーティストと、オルタナティブな女性SSWが良作多かった気がします。エモトラップとか海外でドカンと来てる感じのもありますが、まだそこは日本にはそんなに届いていない気もします。その辺はサブスク中心だからですかね?ま。ハイエイタス・カイヨーテやジェイムス・ブレイク以降という感じでのソウル感とR&Bテイストのある歌ものってので印象に残ったアーティストが多数で、サンファやダーティー・プロジェクターズの新作やアンバー・マークやマギー・ロジャースとかで、選出したジェイ・ソムなエレキをラウドにかき鳴らしエモーショナルな楽曲を歌うというオルタナティブな女性SSWが続出したかと。それこそミツキやジュリアン・ベイカーやフィービー・ブリッジャーズ、ジュリア・ジャックリン、サッカー・マミー、ワクサハッチー、ヴァガボンとかね!あとエイミング・フォー・エンリケという北欧から突然現れたバトルスの遺伝子やカオティックHCをアップデートさせた新スタイルのPOST/ROCKという感じが圧倒的新鮮でした。

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