Black Sands
Bonobo
RELEASE: 2010.03.13
どこまでも続いていきそうな、儚くも暖かいエモーショナル・サウンド。
優美な調べと最先端のビートに乗せて、流れるように描かれていく情緒溢れる一大叙事詩!
複雑さと繊細さが共振し、柔らかな音色と心地良いリズムが情感豊かなサウンド・スケープを編み上げる。生楽器の優れた構成力と綿密なアレンジメントを施すスキル、そして卓越したビート・プログラミングのセンスを兼ね備えた稀代の音楽家、ボノボことサイモン・グリーンの才能が余す所なく発揮され誕生した、叙情系ダンス・ミュージックの新たなる金字塔!
ボノボことサイモン・グリーンが珠玉の4thアルバム『Black Sands』を完成させた。前作『Days To Come』がジャイルス・ピーターソンの2006年年間ベスト・アルバムに選ばれるなど、世界的に絶賛され、以来彼はの代表アーティストの一人へと登り詰めた。『Days To Come』では生バンド・サウンドへの緩やかなシフトが見られたが、『Days To Come』のリリース後、DJ活動に加えて、細部にまでこだわった非常に完成度の高いライヴ・バンドでのパフォーマンスをスタートさせ、自らの音楽ヴィジョンを更に拡げていった。(その成果はDVD作品『Live@Koko』において、はっきりと表現されている)。ライヴ・バンドでのその活動がフィードバックされたサウンドを存分に楽しめるのが、最新作『Black Sands』である。
彼の懐深い音楽的センスと独特の映像的な音世界はそのままに、今作のエモーション漲る音色の数々はリスナーの感情にダイレクトに訴えかける。アルバム全体のトーンを決定づけるオープニング・トラックの「Kiara」。中国のアート映画を連想させる、美しいストリングスのリフレインが印象的だが、サイモン・グリーンは、それをディープなビートとシンセ・サウンド、そしてカット・アップされたヴォーカルのコンテクストの中に絶妙に組み込んでいる。続く「Kong」は、彼に多大な影響を与えてきたソウル・ジャズのテンプレートに近い質感を放ちながらも、聴き込むほどに、ディテールにこだわった彼のプロダクションの複雑さと繊細さを見事にショウケースしているのが伝わってくる。「Eyesdown」のスキッピング・ビート、そしてサブベースのレイヤーの中に組み込んだアンドレア・トリアーナのヴォーカルの使い方からは、グリーン独自の解釈でツー・ステップを追求しているのが分かる。「El Toro」は、ビートの鋭さを失わずに、ブラジル音楽のフレイヴァーを見事に取り込んでいる。「We Could Forever」では、優雅なギター・ラインとメランコリーなベース・ラインを完璧に融合し、1stシングルである「The Keeper」は、グリーンとトリアーナが最高に情熱的でエモーショナルなソウル・ジャムを披露。フライング・ロータス、セオ・パリッシュらとコラボレートしているアンドレア・トリアーナをゲスト・ヴォーカルに迎えた点は今作のハイライトとして特筆されるべき点だ。『All In Forms』は、揺れるような流麗なメロディと、シリアスなビート&ベースのコントラストが特徴的。「Wonder When」では、アンドレア・トリアーナのヴォーカルをポリリズミックなフィンガー・スナッパーの中に取り込んでいる。「Animals」はまるでジョイ・ディヴィジョンがスティーヴ・ライヒとブロコ・バンド(ブラジルのローカル・バンドの総称)がジャムをしているかのよう。そしてタイトル・トラックの「Black Sands」によって、切々と、そして静かにアルバムが幕を閉じる。哀愁漂うワルツとホーンの波が徐々に広がっていき、サウンドが止まった後でさえも、そのサウンドは耳の中で鳴り続ける。
『Black Sands』は、彼のキャリアの中でも、最もコンテンポラリーな作品であると同時に、ボノボことサイモン・グリーンというアーティストが、優れた生楽器の構成力と綿密なアレンジメントを施す能力、そして卓越したビート・プログラミングのスキルを備えた、希代の音楽家であることを証明している。