Artist of the Year

 ザ・キュアーやデペッシュ・モード、U2、コールドプレイ、そしてオアシス。そうしたスタジアム・クラスのワールド・ツアーを行うバンドの仲間入りを果たしそうな勢いと資質を最も兼ね備えているのが、このダブリン出身のフォンテインズ D.C.だ。ここ数年の彼らの足跡を振り返ってみれば自明の理であり、エルトン・ジョンが「今、最高のバンドがフォンテインズD.C.だ。この『Romance』は本当に、本当に、本当に特別だ。おめでとう、グリアン。本当に素晴らしい」と手放しで絶賛し、その賞賛を追認するかのように2025年2月に発表になるグラミー賞の最優秀ロック・アルバム賞と最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンス賞の2部門にノミネート。最優秀ロック・アルバム賞では、グリーン・デイ、ジャック・ホワイト、パール・ジャム、ローリング・ストーンズといった大御所たちと肩を並べ、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンス賞ではアルバムの2曲目「Starburster」がキム・ゴードン、ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ、セイント・ヴィンセントなどと競っていることは、まさに驚くべきことだ。
 それだけではない。ライヴ面ではフジロックフェスティバル '24では彼らの評価と人気ぶりとまったく釣り合っていなかったRED MARQUEEでのパフォーマンスは当然のように入場規制になるほどの人気を博し、2025年7月にはロンドンのフィンズベリー・パークで6.5万人規模の単独公演を行うことが決定し、チケットは即完売となった。
 そんな“大物”ぶりはオアシスの再結成に関して求められたコメントでも際立つことになった。ギターのカルロス・オコンネルは「マジでどうでもいい」、ベースのコナー・ディーガン3世は「正直なところ、僕も興奮はしていない」と言い放ち、その発言に対して、リアム・ギャラガーも反撃。「お前らよりも、もっとマシな格好をしたローディーを見たことがあるぜ。お前らはまるでEMFのようだ」と、おなじみのリアム節が炸裂した。



 しかし、コナーの発言には続きがある。「10年代のような時代にとらわれ、ノスタルジックなことに没頭するあまり、新しいものを作ることを忘れているような気がするんだ。『Romance』で俺たちがやりたかったのは、未来を見据えて新しいものを作ることだったような気がする……だから、オアシスがこのタイミングで再結成するのは、俺たちにとって本当に迷惑なことなんだよ」。
 まさにこの一言に尽きる。『Romance』は彼らが人生の中で聴いてきた断片的なアイルランドの音楽を地下水脈として根付かせながら、自身が培ってきたポストパンクをベースに、ヒップホップやグランジ、さらには映画や日本のマンガなどをコラージュ的に編み上げた、過去も現在も未来も混ざりあった独特の時空が存在している作品だ。『Romance』を聴いて懐かしい気持ちになったかと思えば、未知の感覚に捉われたような気分になるのはそのせいにほかならない。ここでの荒々しいポストパンク・サウンドと繊細なメロディが並置された手法は、かつてオアシスがマッドチェスター以降のグルーヴと60年代の普遍的なメロディを並置させたことに通じると言っていい。リアムのリアクションも、同じアイルランドをルーツに持つ俊英の躍進に対し、『(What's the Story) Morning Glory?』の頃の自分たちを重ね合わせて、嫉妬と励ましが複雑に絡み合ったものだったのではないだろうか。
 また、もうひとつ留意しておきたいのが前作『Skinty Fia』収録の「I Love You」で見せたアイルランドへの愛憎だ。現在の政治情勢に対する深い失望や怒り、母なる国や文化への揺るぎない愛と尊敬がバンドの中で渦巻いており、北アイルランドのベルファスト出身で英国からの独立を目指すリパブリカニズムを掲げて“セックス・ピストルズ以来最も物議を醸すバンド”と言われるKneecapとも連帯している。ヴォーカルのグリアン・チャッテンとドラムのトム・コールがKneecapの2024年発表のアルバム『Fine Art』に参加、またKneecapは来年のフィンズベリー・パークでのライヴではオープニングアクトとして出演する。彼らの政治的スタンスを認めているという証と言っていい。そうした背景も含めて、この2024年末に今年を代表する1枚となった『Romance』を聴き返してみてはいかがだろうか。

油納将志
@masashi_yuno

Summary of 2024

Vogue誌が「カウボーイの年」と定義した2024年。カウボーイ・ハットを被ったエイドリアン・レンカーが『Bright Future』(明るい未来)という美しいアルバムを発表したのは、ビヨンセが『COWBOY CARTER』を送り出す1週間前のことだった。世界は相変わらず混迷を極める一方だが、そのなかで音楽は計り知れない愛と喜びとサプライズを与えてくれた。

チャーリーxcxが『brat』旋風を巻き起こした2024年は、稀に見るクラブ・ミュージックの当たり年だ。フローティング・ポインツ、ジェイミー・エックス・エックスが年間ベスト級の快作をドロップ。待望のデビュー・アルバムを完成させたペギー・グー、予測不能な天才ヴィーガンによる次の一手、〈Ninja Tune〉が送り出すサルート、アイ・ジョーダン、ティーシャといった新世代の躍進も見逃せない。同レーベルが誇る20年選手のティコは、過去の自分とも向き合いつつ唯一無二のクリア・サウンドを刷新。『brat』収録曲のリミックスも手がけたジョン・ホプキンスは、アンビエントと一線を画す瞑想的なサウンドスケープを提示した。

早くも大物の風格を漂わせるUKダンス・デュオ、オーヴァーモノの来日公演も好評だったが、そんな新潮流とシンクロするようにハウス・ビートへ接近したのがフライング・ロータス。彼の主宰レーベル〈Brainfeeder〉に迎えられた長谷川白紙は、『魔法学校』で革新的サウンドを世界に届け、「THE FIRST TAKE」出演を通じてメインストリームにもその名を轟かせた。〈Brainfeeder〉といえば、ハイエイタス・カイヨーテのさらなる進化や、故オースティン・ペラルタ『Endless Planets』の10周年リイシューも印象深い。同レーベルから飛躍したカマシ・ワシントンも今では父親となり、「ダンス・ミュージックとしてのジャズ」を力強く奏でている。

オアシス再結成ツアーの前座候補に挙げられながら、彼らの復活を「どうでもいい」と言ってのけたのは、劇的な変貌を遂げたフォンテインズ D.C.。彼らの『Romance』は2024年におけるロックの最高傑作と見なされており、勝ち気な発言もシーンの“今”を背負っている自信の表れだろう。かたや突然の活動休止で驚かせたのはブラック・ミディ。中心人物のジョーディー・グリープはソロに移行し、前人未踏の境地を突き進んでいる。同バンドのドラマー、モーガン・シンプソンやUKジャズ新世代が集結したナラ・シネフロの2作目『Endlessness』は別格の一枚で、その繊細な音響アートがこぞって絶賛された。UK勢ではグランジとジャズを織り交ぜた孤高の歌を追求するニルファー・ヤンヤ、サウス・ロンドンが生んだ“狂犬軍団”ファット・ドッグの活躍も目立つ。

“奇跡のドラマー”が話題となったフジロックでは、グラス・ビームスの摩訶不思議なグルーヴ、エリカ・デ・カシエールの洗練されたミニマリズムにも注目が集まった。とりわけ反響が大きかったのは、まさかのトラップに接近したキム・ゴードンと、ポーティスヘッドも含めて本邦初ライヴとなったベス・ギボンズ。チャペル・ローンやサブリナ・カーペンターといった新星がポップの主役となる一方で、上述の二大レジェンドやキム・ディールが重厚なアルバムを届けてくれたことも、“女性の年”らしいトピックと言える。

トム・ヨークも衰えぬ創作意欲を爆発させていた。ザ・スマイルとして1年に2枚のアルバムを発表し、レディオヘッドも含めたキャリアを総括する大型ソロ・ツアーは全10公演が完売。彼のライヴ動画が連日SNS上に溢れかえっていた。同世代のスティーヴン・マルクマスが、ペイヴメント再結成を経て、新バンド「ザ・ハード・カルテット」を結成したのも個人的には熱い。

アニヴァーサリー企画も盛況だ。最新作『Dostrotime』でも攻めの姿勢を見せたスクエアプッシャーの『Ultravisitor』、ゼロ年代USインディーを象徴するアニマル・コレクティヴの『Sung Tongs』が発表20周年、エイフェックス・ツイン最大の問題作『Selected Ambient Works Volume II』が30周年を迎え、当時を知らない世代からも再発見されている。エイジアン・ダブ・ファウンデイションは結成30周年の記念盤をリリースしており、年明けに開催される11年ぶりの来日ツアーはお祭り騒ぎになるはず。そしてなんと、我らがビートインクも設立30周年を迎えた。お世辞とかヨイショ抜きに、いまや日本の洋楽文化/ユースカルチャーに欠かせない超重要レーベルである。50周年、100周年、300周年……と続いていくことを願うばかりだ。

小熊俊哉
@kitikuma3

Album of the Year

The Smile
Wall of Eyes

#7 / Uncut
#10 / The Independent
#10 / Louder Than War
#12 / Consequence
#13 / MOJO
#14 / OOR
ロッキンオン The Best Albums of 2024 [Rock]
Apple Music 2024年ベストソング
#16 / MondoSonoro
#25 / NME
#31 / Treble
#35 / Rolling Stone

Kim Gordon
The Collective

#2 / TURN
#4 / ミュージック・マガジン【ロック】[アメリカ/カナダ]
#4 / The Washington Post
#6 / Bleep
#7 / Loud and Quiet
#8 / The Wire
#10 / Pitchfork
#10 / MOJO
#13 / Treble
#16 / Crack Magazine
#17 / RIFF
#18 / The Skinny
#21 / The Forty-Five
#24 / Stereogum
#26 / Rolling Stone
#30 / Uncut
#32 / Louder Than War
#32 / MondoSonoro
#35 / Exclaim!
#37 / Rough Trade UK
#45 / ロッキンオン
#50 / The Quietus
#64 / Paste
BBC Radio 6 Music's Albums of the Year 2024
NPR Music's 50 Best Albums of 2024

Adrianne Lenker
Bright Future

#4 / The Sunday Times
#5 / The Independent
#6 / Uncut
#6 / The Skinny
#9 / ミュージック・マガジン【ロック】[アメリカ/カナダ]
#11 / OOR
#12 / MondoSonoro
#16 / The New Yorker
#16 / Paste
#18 / Time Out
#19 / Stereogum
#20 / RIFF
#21 / Rough Trade UK
#25 / NME
#22 / Crack Magazine
#23 / Pitchfork
#24 / Exclaim!
#30 / The Forty-Five
#35 / MOJO
#56 / Rolling Stone
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024
Uproxx's Best Albums of 2024

Kamasi Washington
Fearless Movement

#1 / ele-king【ジャズ】
#4 / disk union【ジャズ】
#8 / RIFF
#25 / ele-king【ベスト・アルバム】
#44 / MOJO
#47 / MondoSonoro
#62 / Uncut
#100 / Rough Trade UK

Mdou Moctar
Funeral For Justice

#7 / Consequence
#8 / The New Yorker
#13 / Crack Magazine
#14 / Uncut
#18 / Exclaim!
#19 / Rolling Stone
#22 / MOJO
#30 / Pitchfork
#39 / Treble
#60 / Paste
#69 / The Quietus
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

Beth Gibbons
Lives Outgrown

マーキュリー・プライズ2024 ノミネート #1 / TIME
#3 / MOJO
#3 / Uncut
#7 / ele-king【ベスト・アルバム】
#8 / ミュージック・マガジン【ロック】[イギリス/オーストラリア]
#9 / OOR
#15 / Paste
#16 / The Line of Best Fit
#17 / The Forty-Five
#21 / Treble
#24 / MondoSonoro
#26 / NME
#34 / Crack Magazine
#44 / Rough Trade UK
NPR Music's 50 Best Albums of 2024
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

Fontaines D.C.
Romance
 

グラミー賞2部門ノミネート
Apple Music 2024年ベストアルバム & ベストソング
Rolling Stone UK[The Album Award]受賞
#1 / The Independent
#1 / Time Out
#1 / The Sunday Times
#2 / NME
#2 / ミュージック・マガジン【ロック】[イギリス/オーストラリア]
#1 / MondoSonoro
#2 / Crack Magazine
#2 / The Skinny
#2 / Consequence
#2 / OOR
#2 / disk union【ロック・ポップス】
#5 / ロッキンオン
#5 / KCRW
#6 / Louder Than War
#7 / MOJO
#7 / Treble
#8 / Vulture
#11 / The Line of Best Fit
#13 / Paste
#13 / Rough Trade UK
#13 / Uncut
#17 / Dazed
#27 / RIFF
#28 / Stereogum
#33 / Billboard
#39 / Exclaim!
#58 / Rolling Stone
ロッキンオン The Best Albums of 2024 [Rock]
BBC Radio 6 Music's Albums of the Year 2024
Uproxx's Best Albums of 2024
Radio X's 25 Best Albums of 2024

Fat Dog
WOOF.

ロッキンオン NEW COMERS OF THE YEAR
#20 / MondoSonoro
#30 / Louder Than War
#43 / ロッキンオン
#49 / Rough Trade UK
BBC Radio 6 Music Artists of the Year
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

Nala Sinephro
Endlessness

#3 / ミュージック・マガジン【エレクトロニック】
#3 / Crack Magazine
#5 / Pitchfork
#6 / The Line of Best Fit
#9 / Bleep
#10 / Paste
#10 / ele-king【ベスト・アルバム】
#13 / TURN
#14 / Loud and Quiet
#14 / Treble
#18 / The Line of Best Fit
#19 / The Skinny
#20 / The Forty-Five
#21 / Resident Advisor
#23 / Stereogum
#25 / Uncut
#44 / Consequence
#49 / Exclaim!
#53 / Rough Trade UK
ロッキンオン The Best Albums of 2024 [JAZZ]
BBC Radio 6 Music's Albums of the Year 2024
NPR Music's 50 Best Albums of 2024
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

Floating Points
Cascade

ロッキンオン The Best Albums of 2024 [Electronic+Dance]
#1 / ele-king【テクノ】
#2 / disk union【クラブ/ダンス・ミュージック】
#5 / Treble
#6 / ミュージック・マガジン【エレクトロニック】
#13 / OOR
#32 / Stereogum
#46 / Exclaim!
#54 / Rough Trade UK
#63 / MOJO
#83 / Rolling Stone
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

Nilüfer Yanya
My Method Actor

Apple Music 2024年ベストソング
#6 / TIME
#12 / Treble
#12 / Gorilla vs. Bear
#13 / Consequence
#13 / Pitchfork
#14 / Exclaim!
#15 / Dazed
#24 / The Forty-Five
#25 / RIFF
#27 / Stereogum
#32 / Paste
#37 / NME
#39 / MondoSonoro
#55 / Uncut
NPR Music's 50 Best Albums of 2024
Uproxx's Best Albums of 2024

Jamie xx
In Waves

ロッキンオン The Best Albums of 2024 [Electronic+Dance] #3 / ele-king【ハウス】
#3 / KCRW
#4 / MondoSonoro
#6 / Time Out
#18 / OOR
#22 / Rough Trade UK
#25 / The Sunday Times
#28 / Consequence
#30 / Treble
#48 / Billboard
#50 / Exclaim!
Apple Music 2024年ベストソング
Uproxx's Best Albums of 2024
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

The Smile
Cutouts

#4 / Rough Trade UK
#6 / ミュージック・マガジン【ロック】[イギリス/オーストラリア]
#11 / ロッキンオン
SPIN's Albums of the Year 2024

Geordie Greep
The New Sound

#6 / Loud and Quiet
#8 / ele-king【インディ・ロック】
#18 / MondoSonoro
#32 / Treble
#32 / Rough Trade UK
#79 / The Quietus
Glide's 20 Best Albums of 2024

Amyl and The Sniffers
Cartoon Darkness

#1 / Louder Than War
#3 / Kerrang!
#7 / Rough Trade UK
#10 / The Forty-Five
#17 / Consequence
#29 / NME
#34 / MOJO
BBC Radio 6 Music's Albums of the Year 2024
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024
Glide's 20 Best Albums of 2024

Kim Deal
Nobody Loves You More

#6 / MOJO
#6 / The Independent
#42 / Uncut
#43 / Paste
#50 / Consequence
AllMusic's 100 Favorite Albums of 2024

長谷川白紙
魔法学校

#3 / ミュージック・マガジン【ロック】[日本]
TOKYO ALTER MUSIC【Best Alter Artists】


Adrian Sherwood presents DUB SESSIONS 2024

UKダブの総帥エイドリアン・シャーウッドが、ホレス・アンディとクリエイション・レベルと共に来日した伝説の一夜。

bar italia tokyo 2024

初来日公演を成功させたbar italia。漆黒の感情を湛えた、アンニュイな色香をまといつつも激情が爆発する圧倒的パフォーマンス。


BONOBO PRESENTS OUTLIER TOKYO

BONOBO主宰のクラブイベント〈OUTLIER〉の日本初開催が実現!国内外から豪華ラインナップが集結!

KNOWER JAPAN TOUR 2024

超人ルイス・コールとジェネヴィーヴ・アルターディによる 超絶ポップ・ユニット、KNOWER!待望の来日ツアーは全公演SOLD OUT!


Oneohtrix Point Never Japan Tour 2024

最新作『Again』をひっさげOPNが来日!キャリアの絶頂を確信させる、想像をはるかに超えた強烈な体験。

Thom Yorke: EVERYTHING playing work solo from across his career

トム・ヨークによる初の大型ソロ・ジャパン・ツアー が実現!なんと全10公演!キャリアの集大成を思わせるセットリストに歓喜!


BEATINK 30th ANNIVERSARY PARTY

ビートインク30周年記念イベントにADRIAN SHERWOOD、NIC OFFER (!!!) 、DJ KENTARO、真鍋大度、ジム・オルークら豪華ゲストが集結!

Hiatus Kaiyote - Love Heart Cheat Code - JAPAN 2024

ハイエイタス・カイヨーテが8年ぶりの単独来日公演を開催!最新作を中心に圧巻の即興的アンサンブルと観客との温かい交流で、音楽の自由と喜びを体現。


FAT DOG TOKYO

ファット・ドッグ初来日公演は、身体と意識の解離を体感すると共に、モッシュの快感が体中を駆け巡る前例のないカオティックな空間に!

NALA SINEPHRO TOKYO

現代ジャズの境界を押し広げるナラ・シネフロが初来日!即興演奏と重低音の迫力が際立った神秘的な音響空間。


エイフェックス・ツイン王決定戦

『Selected Ambient Works Volume II』30周年盤の発売を記念し「エイフェックス・ツイン王 決定戦」と題したクイズ大会を開催!



板東さえか ラジオDJ/ナレーター
2014年FM802ラジオDJとしてキャリアをスタート。イベントMC/DJ、ナレーターやリポーターなど音楽を真ん中にカルチャー発信中。
@banchan_nb

Overmono & The Streets
『Turn The Page』
Peggy Gou
『I Hear You』
salute
『TRUE MAGIC』


昨年からのY2Kリバイバル、2step〜ドラムンベース〜UKガラージをベースとしたサウンドは更に拡張されつつ、モダンでスタイリッシュな2024年の音として洗練された作品に唸らされる年でした。洋邦共に毎週のようにリリースされるダンスミュージックから世界的なダンスシーンの盛り上がりが国内アーティストにも影響を与えているのを実感しましたし、その豊作っぷりに番組の選曲も弾みました!ペギー・グーはフジロック、オーヴァーモノは単独公演で最新のダンスミュージックを体感できた機会もあり、熱狂するフロアでここ数年を思い返すと胸を打つものがありました。オーヴァーモノは今年のベストライブです!身も心も躍らせながら来年もシーンを追っていきたいと思います。


藤本夏樹
Tempalayではドラム、編曲を担当。
ソロ名義でも活動中。マシンライブやアーティストのプロデュースなども行なっている。
@NatsukiFujimot0

Kim Gordon
『The Collective』
Homeshake
『Horsie』
Fat Dog
『WOOF.』


歪んだギターに代表されるノイジーサウンドから伝わる、所謂パンクス精神的なものに共鳴してしまう自分自身を再認識した年になったと思います。AIの急速な発達によって音楽を作るという事自体の意義を改めて考えざるを得ない状況に置かれている中、より肉体的なアプローチをするアーティストが増えている事は必然のように感じます。「技術的に凄いもの=良いもの」という評価軸が浸透している昨今ですが、その反動からか不完全で人間的な音楽に魅力を感じてるアーティストが増えている事は自分にとって喜ばしい事態です。"凄いもの"ではなく"自己の表現"としての音楽を生み出せるよう相変わらず内側と睨めっこしながら2025年も生きてゆこうと思えたのでした。


ムラカミカイ ミュージシャン/初代エイフェックス・ツイン王
I Saw You Yesterday、エイプリルブルーでギターを担当。
@migraine_blue

Porches
『Shirt』
Vegyn
『The Road To Hell Is Paved With Good Intentions』
Kim Gordon
『The Collective』


嘗て、大江健三郎は著書『叫び声』で「恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」と書いた。音楽家は独自の視点で世界を解釈し、それを音楽に翻訳する。それはある種の叫び声であり、私たちはそれを自分の声のように感じて耳を傾ける。今年もまた、複雑に歪んだ世界で様々な叫び声があがった。しかし、その一部はストリーミングサービスなどで瞬時に消費され、使い捨てられた。現代、音楽が瞬間の快楽として消費されるのは避けがたい現実かもしれない。それでも私は、その刹那の響きが、心の深奥で長く反響し続けることを願っている。音楽が単なる消耗品ではなく、私たちの内面に深く響く叫び声となり、何かを変える力を持ち続けてほしいと強く思う。


yukinoise ライター
よく喋り、よく踊る。
@yukinoise
@yukinoise

Jamie xx
『In Waves』
Vegyn
『The Road To Hell Is Paved With Good Intentions』
Nala Sinephro
『Endlessness』


今でこそ言えることだが、コロナ禍は最悪だったけど最高だった。シークレットパーティーやレイヴで踊り明かし、イージーリスニングに浸り不安定な心を癒しまくったあの強烈な日々が懐かしく感じるほど完全にシーンが息を吹き返してきた今日この頃。ヴィーガンのメランコリックなサウンドスケープ、ダンスフロアの復活に捧げるジェイミー・エックス・エックスのクラブアンセム、同い年とは思えぬナラ・シネフロの進化型ジャズ、内省と回想に耽る20年代前半にようやくケリをつけられるような喜ばしい作品に恵まれた1年でした。


つやちゃん 文筆家/ライター
著書に『スピード・バイブス・パンチライン』『わたしはラップをやることに決めた』、監修に『オルタナティヴR&Bディスクガイド』等。インディペンデントアーティストをサポートする一般社団法人B-Side Incubator理事
@shadow0918

Erika De Casier
『Still』
Iceboy Violet & Nueen
『You Said You'd Hold My Hand Through The Fire』
Beth Gibbons
『Lives Outgrown』


2024年の米国がエグゼイヴィアソーベイスドをはじめとしてますますドリーミーな退廃に傾倒する中、英国はアイスボーイ・バイオレットを筆頭として無重力の退廃に夢中。このエアリーな起点を前者はサマーズに、後者はスペースアフリカに置いてみると、どちらもデビューアルバムを2018年にリリースしている。日本だとゆるふわギャング『Mars Ice HouseⅡ』や釈迦坊主『HEISEI』が出た年であって、つまりそういうこと。私たちは今、2018年以降を生きている。今年も引き続きそうだった。ただ、そろそろ苦しくもなってきた。闇なんとかに病みなんとか、もうデカダンスはお腹いっぱい。明るい未来が見たいよ。


hiwatt ライター
1995年生まれ、大阪在住。世界のインディ音楽や、アンダーグラウンドの電子音楽などについての執筆活動を行う。マンチェスター・シティFCをこよなく愛する。
@kalopsia___3

Floating Points
『Cascade』
Vegyn
『The Road To Hell Is Paved With Good Intentions』
Iceboy Violet & Nueen
『You Said You'd Hold My Hand Through The Fire』


欧州のアンダーグラウンドは、階層ごとに違った動きが見られた。フローティング・ポインツやジェイミー・エックス・エックス、フォー・テットなどの、DJとしても世界的なプロップスを誇るビッグネームは、原点に回帰。
ヴィーガンやジェイムス・ブレイクのような、メインストリームにハブを持ちながら、自身のレーベルを持つ中堅は多面的な活躍を見せた。一方、インディペンデントな若手は、経済的/地政学的な影響が直結するため、ローカルにシーンが分散し、それぞれに特色を強めている。例えば、マンチェスターのブラックハインやアイスボーイ・バイオレットを中心としたエッジィなラップシーンは、多方面から注目を集めるなど火種は大きい。
ただ、ネットやフェスを通した連帯は強固で、広域連合連合的な交錯から、次々と新たなサウンドが生まれている。


吉澤奈々 ライター/TURN編集
音楽メディアTURNにて執筆・編集を担当。
@yoshizawa_n

Cocteau Twins And Harold Budd
『The Moon and the Melodies』
Broadcast
『Spell Blanket - Collected Demos 2006-2009』
Nourished by Time
『Catching Chickens』


今年はドリーム・ポップ/シューゲイザー周辺の先駆者に関するリリースが多かったと思います。ギャラクシー500 のアーカイブ集やロウ、ダスターらのスロウコア勢による作品はもちろんのこと、特に印象深いのはドリーム・ポップの創始者であるコクトー・ツインズ・アンド・ハロルド・バットのリイシュー作品。リマスタリングによって実験的なアンビエント〜ドローンに変幻しつつも、その独自性を再認識しました。さらには、ブロードキャストのサイケデリアな響きから今のゴス・ロックを思い重ねてみたり。その一方で、ナリッシュド・バイ・タイムのようにあらゆる分野をシームレスに繋げ、再解釈する宅録アーティストが増えてきた印象もあります。過去を知る・巡る作品に出会えて、嬉しい1年でした。


最込舜一 ライター/編集/ポッドキャスター
神奈川県相模原出身・在住の大学院生。専門は建築史。音楽家へのインタビューやライヴレポ、論考の執筆も行う。1999年生。名字は「もこみ」と読みます。
@mocomi__

Goat Girl
『Below The Waste』
Sam Morton
『Daffodils & Dirt』
Bill Ryder-Jones
『Iechyd Da』


フジロックでベス・ギボンズがポーティスヘッドの曲をやったのも嬉しかったが、新作『Lives Outgrown』の繊細かつ重厚なサウンドの完全再現には度肝を抜かれた。本作のプロデューサーは八面六臂の活躍を続けるジェームス・フォード御大。〈Domino〉の重要作には大体彼の手が及んでいる(例えばアークティック・モンキーズや新人ファット・ドッグ)。つまりは今年で30周年を迎えた(!)偉大なるbeatink社の経営や、その広告費から原稿料を頂戴する私の生活をも間接的に支える人物だ。彼はベスのステージにもいたし、上記作品のいずれかにも参加している。裏方との協働という観点からそれぞれの魅力を記したいが、字数が足りないので、ぜひご自身で丹精込めて作られたWeb記事で探究してくださいませ!


おすすめ音楽紹介
@E6jLy

Real Estate
『Daniel』
Adrianne Lenker
『Bright Future』
Jamie xx
『In Waves』


早いもので20年代も中盤を迎え2000年代後半に華々しくデビューしたヴァンパイア・ウィークエンドやリアル・エステートなど、新進気鋭のバンドも40代に差し掛かり貫禄を纏い始めたのはデビュー当時の初々しさを知る身からすると感慨深いです、同時にエイドリアン・レンカーやジェイミー・エックス・エックス、MJ・レンダーマンなど、次世代を担うバンドのキーパーソン達が展望を開く傑作をリリースしたことも今後の活動への期待が非常に膨らみます、私の愛好するインディ・ロックやフォーク、SSWは音楽シーンの中心やセールスとは距離があり話題としてはどうしても地味になりがちですが、2024年も聴き逃すには惜しい素晴らしい作品に恵まれていましたので、1人でも多くの方に届けられるよう微力ながら盛り上げていきたいです。


河村祐介 OTOTOY編集長 / 書籍『DUB入門』監修
@Futoru_

Tim Reaper & Kloke
『In Full Effect』
Bogdan Raczynski
『You’re Only Young Once But You Can Be Stupid Forever』
Kamasi Washington
『Fearless Movement』


監修本『DUB入門』(よろしくお願いします!)を作っていたら夏までそっくり記憶がヌケ墜ちている感じの2024年。事実や法治よりもデジタルで切り刻まれたある種の衝動に訴えかけるだけの、それぞれの神様を信じるようになった時代に鳴る音楽とは? と日々考えてもいる。とりあえず、ある種のコミュニティへの意識とそこで流れる音楽の効能。あるいは、さらにはもはやそこにはいなくなったけれども決して否定できないコミュニティへの愛情を感じる、などの音楽と思える3枚。


Casanova.S 音楽ライター
インディー・ミュージック・ファン。ele-kingを中心に音楽レビューやインタビューを手がける。
@CCYandB

Fontaines D.C.
『Romance』
cumgirl8
『the 8th cumming』
Fcukers
『Baggy$$』


「ロマンスは場所なのかもしれない」今年、24年はフォンテインズ D.C.の『Romance』のこの言葉と共にありました。ロマンを感じられるような場所がある、それは物理的なものだけではなく、そんな場所が世界のどこかに存在すると信じられる心のあり方、状態なのではないかと思います。そんな場所を大切にして生きたい。カムガール・エイトはサイバー空間を駆け巡るピンチョン的な下世話なロマンスが最高で完全にやられました。大西洋を越え、時を越え向こう側から描かれる重力の虹的な(クラクソンズのことも頭によぎりました)。そしてファッカーズは未来!90年代00年代を経由して近未来の世界に現れたような存在で素晴らしいEPでした。25年もドキドキを感じられる世界であって欲しい。


岡村詩野 音楽ライター
music writer.音楽についての文章を書いてます。TURN(@TURNTOKYO)編集長。
京都精華大学、昭和音楽大学非常勤講師、α-STATION月曜午前10時『Imaginary Line』(@fmkyoto_ImLine) など。
@shino_okamura

Adrianne Lenker
『Bright Future』
Cat Power
『Cat Power Sings Dylan』
Kim Gordon
『The Collective』


〈Domino〉〈Matador〉あるいはBeatinkではないが〈Thrill Jockey〉や〈Drag City〉〈Merge〉など老舗レーベルのタフネスを年々思い知る。新鋭をフックアップし育てていくだけではなく、レーベルと長く信頼関係を築いているアーティストに対しても手厚くサポートし続け、しかも毎年なんらかの結果もちゃんと残す……インディーズとして理想的な歩みを続けているそれら歴史ある人気レーベルにはただリスペクトしかない。若さのパッションを応援し、信頼にたるキャリアと共に歩んでいくという彼らの地道な運営と活動には、日本のメディアやレーベルも大いに学ぶべきところがあるように思う。今年もお世話になりました。


\ 2025年もどうぞよろしくお願いします!/