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日々音楽と共に過ごしている、あの人の今年の3枚。
代官山蔦屋書店 河原陽子 / Tower Records 渋谷店 武田晃 / HMV 寺町知秀 / diskunion 木嶋 幸弘 / FLAKE RECORDS 和田貴博 / BEAMS RECORDS 廣瀬麻美 / record shop BIG LOVE 石動丸倫彦 / TECHNIQUE 佐藤吉春 / SMASH 佐藤ハリー / Creativeman 平山善成 / Rhizomatiks クリエイティブチーム / パルコエンタテインメント事業部 小林大介
INTRODUCTION
音楽は常におもしろいと考える筆者にとって、2019年の音楽シーンも大いに楽しめるものだった。たとえばサンダーキャットやマイケル・キワヌーカを迎えて制作されたリトル・シムズの『GREY Area』は、彼女がルーツとするヒップホップやグライムを下地に、ネオ・ソウルやファンクも巧みに織りまぜた良作だ。個人的な出来事から社会風刺まで、幅広い題材を扱った歌詞のリリシズムも素晴らしい。
1979年の設立からUKポップ・ミュージックを牽引しつづける〈4AD〉の作品も良盤が多かった。多彩なメロディーやアレンジが光るオルダス・ハーディングの『Designer』は、アシッド・フォーク的なサイケデリアで私たちを魅了した。
ピッチフォークがBest New Musicをあたえたビッグ・シーフの『U.F.O.F』も、フェアポート・コンヴェンションといったブリティッシュ・フォーク・ロックを想起させる繊細なサウンドで、多くの玄人リスナーを唸らせた。
ブラックミディによるデビュー・アルバム『Schlagenheim』も印象的だった。ゴート・ガールやHMLTDなどと共にサウス・ロンドンのロック・シーンを担うバンドとされていたが、そのような狭い枠に収まらない才気を放つ傑作だ。変則的で精巧なリズムが生みだすグルーヴは、リスナーを興奮させるには十分すぎるインパクトがあった。来日公演ではディジー・ラスカルの“Bonkers”に合わせてステージに登場するなど、愛らしいユーモアも備えている。
長年音楽シーンで活躍する者たちの偉大さを感じることも多かった。〈Brainfeeder〉の主宰としても絶大な影響力を発揮しつづけるフライング・ロータスは、壮大なコンセプトが込められた『Flamagra』で限界のない創造力の持ち主だと示した。設立から30年を迎えたエレクトロニック・ミュージックの名門〈Warp〉も、貴重な音源をまとめた『WXAXRXP SESSIONS』シリーズなど、さまざまな形で自らの偉業を祝っている。記念といえば、〈4AD〉が設立40周年に伴うショウケース・ライヴを日本で開催したことも嬉しかった。ディア・ハンター、ギャング・ギャング・ダンス、エクス:レイが参加し、レーベルの歩みを寿いた。
偉大さならトム・ヨーク(レディオヘッド)とアンダーワールドも忘れてはいけない。前者は2014年の『Tomorrow's Modern Boxes』以来となるオリジナル・アルバム『ANIMA』で、洗練の極みにあるエレクトロニック・サウンドを鳴らした。後者は毎週何かしらの創作を52週にわたって発表する『DRIFT』プロジェクトの総決算、『Drift Series 1』をリリース。共に衰え知らずの創作意欲を厳然と見せつけてくれた。
ザ・シネマティック・オーケストラが12年ぶりのアルバム『To Believe』をリリースしたのも喜ばしい出来事だった。デニス・ハムといった〈Brainfeeder〉周辺のアーティストが多く参加したそれは、繊細なストリングスを軸にジャズやエレクトロニック・ミュージックが流麗に絡みあう良盤だ。
2020年は〈Ninja Tune〉が30周年を迎え、復活したステレオラブも来日公演を予定していたりと、楽しみな動きが多い。一方で、本格的にブレイクしたナイジェリアのオルテ・ムーヴメントなど、非西洋の視点もさらに盛りあがるだろう。そうした古と新の交わりがおもしろい潮流を生みだしてほしいと願いながら、2020年の音楽シーンも楽しむつもりだ。
Text by 近藤真弥
なんと12年ぶりのアルバム・リリースで帰ってきたTCO。原 摩利彦と敢行したホール・ツアーやフェスでの圧巻のライブは今年のハイライトの一つ。
12年ぶりの最新作!初のホール単独来日公演!
NF in MIDNIGHTSONIC出演
rockin’on The Best Albums of 2019 40位
Piccadilly Records’ Top 100 Albums of 2019 13位
Drift’s Records of the Year 2019 84位
Aldous Harding “Designer”
怪しく不思議なオルダス・ワールド全開!
初来日!@ WWWX
Loud & Quiet Best Albums of the Year 2位
Q Magazine 3位
MOJO Best Albums of the Year 5位
Uncut’s 75 Best Albums of 2019 23位
Rough Trade’s Albums of the Year 46位
Drift’s Records of the Year 2019 28位
Big Thief “U.F.O.F.” & "Two Hands"
2部作となるアルバムを今年立て続けにリリース!どちらも世界中で高評価、各所の年間ベストを席巻中!
2020年 初来日決定!
“U.F.O.F.”
グラミー賞 BEST ALTERNATIVE MUSIC ALBUM ノミネート
TIME’s 10 Best Albums of 2019 3位
Pitchfork The 50 Best Albums of 2019 3位
The Skinny’s Albums of 2019 7位
Uncut’s 75 Best Albums of 2019 9位
MOJO Best Albums of the Year 22位
Paste The 50 Best Albums of 2019 24位
VICE The 100 Best Albums of 2019 30位
“Two Hands”
The Skinny’s Albums of 2019 2位
Paste The 50 Best Albums of 2019 4位
Rough Trade’s Albums of the Year 17位
Drift’s Records of the Year 2019 4位
VICE The 100 Best Albums of 2019 30位
Flying Lotus “Flamagra”
マグマのごとく燃えたぎるフライローのイマジネーションが大爆発!
Brainfeeder勢も大集結の単独来日@STUDIO COAST
rockin’on The Best Albums of 2019 26位
Bleep’s Top 10 Albums of the Year 3位
Piccadilly Records’ Top 100 Albums of 2019 23位
MOJO Best Albums of the Year 38位
Drift’s Records of the Year 2019 63位
Rough Trade’s Albums of the Year 67位
Danny Brown “uknowhatimsayin”
刺激的なフレーズと、ゾッとする一瞬、そして最高に笑える瞬間に満ち溢れている。- WALL STREET JOURNAL
Bleep’s Top 10 Albums of the Year 8位
Pitchfork Th 50 Best Albums of 2019 48位
”Heavy Rain” & “Rainford”
『Rainford』が2019年における『Roast Fish, Collie Weed & Corn Bread』(1992) だとすれば、『Heavy Rain』は『Super Ape』である。
ADRIAN SHERWOOD来日!
”Heavy Rain”
MOJO Best Albums of the Year 10位
Bleep’s Top 10 Albums of the Year 10位
”Rainford”
Billboard Reggae chart 初登場1位
The National “I Am Easy To Find”
同名の短編映画も話題に!USインディー・シーン最重要バンドが新たに魅せた一面。
2020年来日決定!
Music Magazine ロック (US/カナダ) 5位
rockin’on The Best Albums of 2019 17位
The Skinny’s Albums of 2019 6位
Albumism’s 50 Best Albums of 2019 16位
Uncut’s 75 Best Albums of 2019 27位
Little Simz “GREY Area”
鋭いラミング、媚びないアティテュード、ケンドリック・ラマーも認める確かな才能。文句なしの「本物」の決定打となった一枚。
Rough Trade’s Albums of the Year 4位
-BBC Radio 6 Music’s Albums of the Year 5位
-Piccadilly Records’ Top 100 Albums of 2019 9位
black midi “Schlagenheim”
ブラック・ミディはインディーロックの未来に身を捧げるより、未来からインディーロックを想像することに興味があるようだ。- Pitchfork
初来日全3公演 SOLD OUT!
Music Magazine ロック(UK/オーストラリア)4位
rockin’on The Best Albums of 2019 11位
Rough Trade’s Albums of the Year 5位
MOJO Best Albums of the Year 8位
Drift’s Records of the Year 2019 8位
Paste The 50 Best Albums of 2019 11位
Khruangbin “全てが君に微笑む”
妖艶なローラ、新たなギター・ヒーロー:マーク、機械のようにタイトなドラミング”DJ”の3人が奏でるエキゾ・グルーヴ。YMOのカヴァーで知られる’Firecracker’収録の日本限定盤!
FUJI ROCK FESTIVAL
初来日全3公演 SOLD OUT!
Thom Yorke “ANIMA”
トム・ヨーク初となる映画音楽。傑作ホラー映画をエモーショナルなピアノの旋律や歌声が彩る。
FUJI ROCK FESTIVAL出演!
グラミー賞ノミネート!
BEST ALTERNATIVE MUSIC ALBUM / BEST MUSIC FILM ノミネート
rockin’on The Best Albums of 2019 4位
Music Magazine ロック(UK/オーストラリア) 7位
Starcrawler “Devour You”
ロックンロールの化身、スタークローラーが楽曲・サウンド・パフォーマンスと大成長を遂げ帰還!Ramonesカヴァーも収録!
3都市来日ツアーを敢行!
ボーカルが入りTychoのサウンドにより温度感を持たせ、新たな音への広がりをみせた一枚。
FUJI ROCK FESTIVAL
グラミー賞 BEST DANCE/ELECTRONIC ALBUM ノミネート
ディスクユニオン クラブ/ダンス・ミュージック 4位
!!! (chk chk chk) “Wallop”
どこまでも自由で強靭、ブレない唯一無二のダンス・ミュージックに心と体が踊り出す!!!
3都市来日ツアー
WXAXRXP DJS
Floating Points “Crush”
最新作にして最高傑作。フロアの初期衝動と情熱、音楽的成熟が詰まった一枚。
Music Magazine エレクトロニック・ミュージック1位
ディスクユニオン クラブ/ダンス・ミュージック 2位
VICE The 100 Best Albums of 2019 27位
Underworld “Drift Series 1 - Sampler Edition”
52週にわたり毎週休まず作品を発表するというとんでもないプロジェクト#DRIFTの総括。常に最前線でキレキレのアンダーワールドを堪能出来る一枚。
rockin’on The Best Albums of 2019 24位
MOJO Best Albums of the Year 28位
Steve Lacy “Apollo XXI”
ジ・インターネット中心メンバーにして弱冠20歳の天才プロデューサー、超待望のソロ・デビュー・アルバム!
2020年初来日決定!
グラミー賞 BEST URBAN CONTEMPORARY ALBUM ノミネート
Music Magazine R&B/ソウル/ブルース 1位
VICE The 100 Best Albums of 2019 29位
FKA twigs “MAGDALENE”
胸が張り裂けるような彼女の経験を、美しさ、そしてアートとして見事に昇華。Pitchfork今年最高点の9.4点獲得!
グラミー賞 BEST MUSIC VIDEO ノミネート
MUSIC MAGAZINE エレクトロニック・ミュージック6位
TIME’s 10 Best Albums of 2019 1位
Pitchfork Th 50 Best Albums of 2019 2位
Bleep’s Top 10 Albums of the Year 4位
Paste The 50 Best Albums of 2019 5位
The Skinny’s Albums of 2019 8位
Jordan Rakei "Origin"
彼の持ち味である心震える歌声、メロディセンスはそのままに、よりオープンでソウルフルに進化した1枚。
3日間の単独来日公演
Albumism’s 50 Best Albums of 2019 29位
日常の中に好きな音楽をこっそり忍ばせることができるアーティスト/レーベルグッズ。
WXAXRXPグッズ
キャップ/キーカバー/スマホリング/ナップサック
刺繍グッズ
特典/レーベルグッズなど
Starcrawlerコンドーム/FKA twigsワッペン/Rough Tradeバンダナ
4AD Tote
ぶつけ合うことによって生まれた想像を超えた新しい音。
一生心に残るライブ。
その日その時にしか起こらないアーティストが生み出す熱狂の瞬間を今年もたくさん焼き付けて。
WXAXRXP (Flying Lotus/DJS/!!!/Battles)
今年はなんと言ってもWarp30周年。1週間で4都市9公演を敢行、Squarepusher・Bibio・OPN・!!!が一堂に会したり、Flying Lotusの3D公演、BATTLESx平沢進など、アニバーサリーイヤーにふさわしいスペシャルさ。
ライブレポート:Flying Lotus / !!! / WXAXRXP DJS / Battles
- Time Boom X The Upsetter Dub Sessions -
エキゾティコ・デ・ラゴLIVE、LEE “SCRATCH” PERRYとの35年間のアーカイヴに潜った自身のセット、そしてAudio Active、Dry&Heavyのメンバーが集結したバンドRoots Of BeatのLIVEと生ダブMIX 3本勝負、ズブズブと音にダイブした一夜。
初来日とは思えないカリスマ性とパワーに満ちた衝撃のライヴ。Dos Monosとお互いのTシャツ/LPを交換し、終演後のこのグルーヴ感溢れる1枚がいかに良い夜となったかを物語っていますね。
日没後のWHITE STAGE、温度感のあるセイント・シナーの歌声とタイトなバンド・セット、そして巨大スクリーンでの映像演出、これ以上無い完璧な組み合わせ。
妖精のようなローレン・メイベリーの伸びのある透明感ある歌声と骨太なライブ・サウンドが魅せた、最高のライヴ・パフォーマンス。
自分のスタジオを持ってきたかのように置かれたギターラック、鍵盤、サックス…と楽器たちに囲まれステージ立つFKJ。そこでたった一人の人間から生み出されているとは信じがたいグルーヴがサマソニの海岸を包んだ。
オールナイト公演が減りつつある昨今、夜のフロアの本気が詰まっていた一夜。3時間のロング・セットにも関わらず、全く飽きが来ずダンスが止まらない、流石BonoboなDJ SET。
キャリア史上初のホール来日公演。原 摩利彦の静謐なライブセット、そして11年ぶりの単独公演でファンの期待値がMAXであったThe Cinematic Orchestraの圧巻のカタルシスに満ちたステージ。
日々音楽と共に過ごしている、あの人の今年の3枚。
2019年はどんな年だったのか?
今年の3枚をバイヤー・プロモーター・識者の方々に選んでもらいました。
河原陽子
代官山 蔦屋書店 音楽フロア バイヤー
バイヤー、フェアやイベント企画
音楽というジャンルを超えて代官山から発信できたらいいなと思っています。
"Camino De Flores"
2019年は、設立40周年を迎えたレーベル「4AD」から始まり、30周年のWARP RECORDS「WXAXRXP」で締めくくるアニバーサリーな1年だったと思います。両レーベルとも先鋭的アーティストを数多く輩出してきた重要レーベルであり、1月に行われた4ADショーケースは昨日のことのように深く覚えています。9月の終わりから11月にかけてのWXAXRXPの豪華なライブはもちろん、記念作品『WXAXRXP SESSIONS』12インチ10タイトルは、やることがかっこよすぎる!と思いました。周年ではありませんが、3月クアトロにて、Khruangbin初来日にして“1夜2公演”は伝説のライブとなりましたね。痺れました。
ベスト3に絞るのは本当に難しいですが、サウンドスケープが最高!という3枚を選びました。まずは、4ADからリリースラッシュが続いた中で、多くのメディアから絶賛されたBig Theifの『U.F.O.F』は、エモーショナルなヴォーカルから広がるサウンドスケープの虜になりました。ライブも楽しみ!次に、中南米の伝統音楽を取り入れた「エレクトリック・フォルクローレ」と言われる中から、El Buhoの『Camino De Flores』は中毒性が高い傑作。NICOLA CRUZがフジロックに出演も話題になりました。また最近5年ぶりに発売したTeebsの『anicca』は色鮮やかなサウンドが最高です。
去年に引き続き2019年もBeatinkさんに大変お世話になった1年でした。2020年もリリースされる作品を楽しみにしています。
武田晃
TOWER RECORDS 渋谷店
インディロック・バイヤー
"The Age of Immunology"
"GHOSTEEN"
10年代最後の年を僕なりに締めくくるなら、とにかく暗く尖った音楽、それでいて後味が美しい音楽に魅了された1年だった。ここにあげる3枚の次点から話すならビック・シーフ(僕は2枚目派)、フォウンテンズDC、ブラック・ミディ、ジャイアント・スワン、ラナ・デル・レイ、ジェシカ・プラット、4番手ならエラド・ネグロかサンドロ・ペリー...そんな中で脅かされたのがダブリンの狂犬ことガール・バンドの2作目。インダストリアル、ポストパンクの緊張感と鋭さ、ハードコア由来の激しさが混沌とした空気の中でぶつかり合う...衝撃としか言えない音の暴力はとにかくクールの一言に尽きる。そしてステレオラブが復活し(来年のライブが楽しみ)再評価なこの界隈のサイケデリックポップの中でも異色を放っていたのがヴァニシング・ツイン。ブロードキャストの元メンバーを筆頭に個性派が集結したバンドはまるでゴシック様式と現代アートが入り混じる時代錯誤の異形アートサウンド。アートワーク、パフォーマンス含め総合芸術と言える世界観。そして個人的に今年を象徴するアルバムとなったのがニック・ケイヴ。元々不動の1番好きなアーティストとなんですが、この作品は孤高のカリスマが悲しみを乗り越え遂に辿り着いた、現実離れの美しい別世界。40年を超えるキャリアにも関わらず再び絶頂期と言える存在感は流石。たぶん一生ついて行きます。
ローソンHMVエンタテイメント商品本部にて
洋楽バイヤーを担当
"Cafe Mor"
"Essentials"
キム・ゴードンの気概そのものと言える、初ソロアルバムのソリッドでアグレッシヴな音像が鮮烈でした。長年連れ添ったサーストン・ムーアとの別離がありキツかった時、ひたすらラップを聴いて自身を奮い立たせたという。めっちゃタフ。自分が音楽にのめり込んだ10代の頃から憧れ続けている元ナパーム・デスのドラマー、ミック・ハリスの今やひとりユニット=スコーン新作は、地獄のようなドゥーム・ミニマル・ダブで今作も最高。スリーフォード・モッズのジェイソン・ウィリアムソンをフィーチャー(意外な顔合わせ)した「Talk Whiff」の不穏な空気感は、速度を落としたグライムのようで心底ヒリヒリしました。デンマークはコペンハーゲンのネオなシンガー、エリカ・ド・カシエールのデビュー作は、レイドバックした90’SスタイルのR&Bを今の質感でコーティングしたデンマーク地下クラブシーンの才人、DJ CENTRALによる手腕が冴え渡るオルタナR&Bの傑作。水面に浮かぶようにぼんやりと漂う、エリカ嬢の憂いを帯びた可憐な歌声がたまりません。
ディスクユニオンROCK/POPS /INDIE担当
"MAGDALENE"
"mint exorcist"
"海と宇宙の子供たち"
Bluetoothイヤホン(Bluetoothスピーカー)+サブスクの組み合わせが定番化し、音楽の聴き方が完全に変化してしまった一年でした。しかし、サブスクでしか聴けない音楽もあれば、フィジカルでしか聴けない音楽もあるし、サブスクで聴いていたらフィジカルで聴きたくなってしまうこともまだ多くあり、CDやレコードを買うことは簡単にやめられそうにありません。そして、サブスクで音楽を聴くようになればなるほど、手に取って眺めたくなるようなジャケット、紙に印刷された状態を見たいと思わされてしまうような詞、という音以外の二つのフィジカル要素に関しては、より強く惹かれるようになってしまいました。強烈な印象のヴィジュアルとアートワークもさることながら、音と歌を極限まで昇華させたミュータントR&Bディーヴァ、FKA twigs。新メンバー(?)二人の素晴らしいマリアージュにより、約16年ぶりの復活作にしてグループ史上最もアッパーでヘルシーな傑作を届けてくれたFINAL SPANK HAPPY。現代音楽とポップスを融合させた独創的楽曲という芯はぶれることなく、数年間の進化/深化の集大成とも言える作品を作り上げたMaison book girl。ジャズやブレイクコアがミックスされた奇天烈なトラック上に柔らかな声と美しいメロディーと詞を踊らせる長谷川白紙。この4組の音源は、手に取って、目で見て、聴きました。
和田貴博
大阪のレコードショップFLAKE RECORDS代表。愛称はDAWA(ダワ)。
自主レーベル「FLAKE SOUNDS」を主催し、自主イベントのオーガナイズまで仕事は多岐に渡る。「死ぬまでに行くべき27のレコードストア」にも選出されている。
"When We All Fall Asleep, Where Do We Go?"
毎年言ってる感じもしますし、来年も言う気がしますが、やはりサブスクリプションのあり方と、アナログレコードのあり方がどんどん溶け合っている感じがします。ここまでの75文字は昨年と一語一句変わりありません。本当にそこは加速している感じがしてて、そこにカセットテープが混じってきています。そしてレコードショップとしては、いよいよ本当にCDが売れなくなってきたと感じます。あとは色々なものの速度感が増しているかな。凄い勢いで色々が消化されている感じ。そんな中、今年は誰もが認めるでしょうけど、Billie Eilishの年になったかと思います。あらゆるカルチャー。ポップシーンから、アイドルシーンからセレブ、アンダーグラウンド、インディからオルタナまで全ての寵愛を受ける唯一無二の存在としてダントツの輝きを放っていたと思います。17歳の発言にドキドキさせられ続けた1年。音楽的には個人的にバンド感のあるHIP HOPに魅了されてのLittle SimzやJamila Woodsなどをよく聞いていました、フォークの音のバランス感を崩した感さえあるBig Thiefの2枚の作品には本当に驚かされたなと。あとはPost MaloneのOzzy OsbourneのフックやRina Sawayamaの新曲とか聞いて、モダンヘヴィネス/メタルが最先端の音楽として扱われる波が来そうな感じしてます。いや、来ないかな。
廣瀬麻美
ビームス レコーズ ショップマネージャー兼バイヤー。
店頭で接客をしながら、バイイング、販促イベントの企画などを担当しています。
"Siku"
"Wool In The Pool"
アーティストや作品の性格に合う方法で楽しむ事ができる環境の中で、特に”ディスクを手元に置く価値“に重きを置いて選んでみました。Floating Points『Crush』は電子音やストリングスの連なりで最高にエモーショナルなストーリーを奏でていて、聴き手として感極まった1枚。店内のサウンドシステムで再生するとそこに居る皆が圧倒され、顔を見合わせる。そうした場面がこのアルバムの威力を表していたように思いました。同様にフィジカルで聴く醍醐味を大いに感じさせてくれた作品といえばNicola Cruz『Siku』。南米ならではの生楽器の響きや歌は生命力に溢れていて、それでいてダンスの機能も備わっていて、エスニックなサウンドに接点の無いリスナーにも支持されていたのがとても印象的でした。片やバンド物に目を向けると東京のオルタナ・ファンクバンドWool & The Pants『Wool In The Pool』は店頭でロングセラーに。3ピースならではのミニマムな演奏をベースに、所々で効いているエフェクティブな味付けや、ぼんやりじんわり耳に残る歌詞にも惹きつけるものがあったに違いありません。振り返ると挙げきれないほど素晴らしい音楽体験が沢山あり、2020年への助走は万全と言えそうです!
石動丸倫彦
record shop Big Love エレクトロニック部門バイヤー、三宿WEBにてパーティー「FISH」「CLOWN」オーガナイズ、雑誌「border magazine」執筆等。
"Fog FM"
"5GTOUR"
2019年は全ジャンル世界のトレンドがサウスロンドンを中心地としたUKに再び集結した1年だったと言ってみたい。The Libertinesやニューレイブと呼ばれた10年前から比べると、ガラパゴといっても良さげなイギリス民族のみが出来る特殊な変化を遂げ、新たなロックの世界の境地にたどり着いた、星の数程の凄過ぎる若きバンドを擁する10年代後半UKインディ・ロック・シーンの先駆者にして象徴でもある現代のロックスターFat White Familyの3rdアルバムに尊敬と感謝の拍手を送りたい。
エレクトロニック部門ではNYのAnthony Naples。2012年の登場から世界中をDJで巡り誰よりも今を把握、その才能の円熟に達した今作は彼の思慮が一音一音細部まで行き渡るド傑作盤。普段エレクトロニックを聴かない方へもお勧め出来る最高級の一枚。彼のレーベル〈Incienso〉も全て折り紙付きの必聴盤です。
UKダブも今年、来年と手放しで思いきりその世界に入り込みたい楽しさ満点のトレンドです。中でも来日公演に関わらせてもらったと言う事で、、、けれどそれだけでは本当になく(とはいえ場での出会いもとても大事と感じるようになった1年でした)ニュールーツ、ダブ、グライム、UKラップを自分の世界観で融合、オリジナリティへと昇華させる彼は貴重な才能かつ今後も保証の真の実力者。ツアー中にタブレットだけで作ったという今のところCD−Rだけのこのアルバムも完全に脱帽の素晴らしい一枚、是非聴いてみて欲しいです。
佐藤吉春
レコードショップ「TECHNIQUE(テクニーク)」、 ディストリビューター「EFD」を運営。
"TECHNO DE SBSUELO"
"SMILES DEFY GRAVITY EP"
昨年の総括では「日本のシーンも変革の始まりかも」といった感じでまとめたかと思いますが、今年はそれがしっかり現れたように思います。全体的なサウンドの傾向としてキャッチ―でBPMが早くなってきています。デトロイトやエレクトロ、レイブ、ブリープテクノ、IDM、UKガラージなど90年代的なものを取り入れた作品が多く、これまで主流にあったミニマルハウス的なムードも併せ持ったハイブリットなリリースが増えました。テクノというジャンルが広義で解釈されていた時代のような多様性あるリリースが目立ち、ジャンルの壁を超えた作品が多かったです。
また、ベテラン勢から中堅、ニューカマーと多くの日本人アーティストの世界的な活躍も昨年にも増して目立った一年でした。その活躍を見ると音楽を掘りまくって知識を増やし、スキルとセンスと磨いて世界に向けてしっかりアウトプットしていくことが重要だと再認識させられました。
佐藤 ハリー
SMASHという会社で、アーティストの来日公演の企画/制作、FUJI ROCK FESTIVALや朝霧JAMを始めとしたイベントのブッキングなどをしています。
"Jaime"
ソニー・ミュージックレーベルズ / SICP6199 ¥2,400 (+税)
"Rapture EP"
1. Brittany Howard - Jaime
Alabama ShakesのシンガーBtittany初のソロアルバム。アメリカ南部ソウルの1つの到達点と言える懐古主義にとらわれない、超極上なソウルフルなロックアルバム。D’AngeloのアルバムBlack Messiahと肩を並べる現代のソウルミュージックの大名盤。
2. Koffee - Rapture EP (Koffee Music)
まだあどけなさ残る少年(本人は女性)のような独特な歌声で、えげつないフロウで頭から離れない超強粘着なフックを決めまくる、ジャマイカ出身、弱冠19歳のレゲエミュージックの神童。
3. Floating Points - Crush (Ninja Tune)
緻密に構築された知性的なサウンドが魅力のエレクトロプロデューサー。無機質で冷たく美しい神秘的な電子音楽宇宙。シングルとして先行リリースされた疾走感溢れる繊細且つ強靭なテクノトラックLesAlpxは従わざるを得ない絶対的グルーヴ。
平山善成
サマーソニックのPR、UKロック・インディー系のブッキングも担当しています。
"FATHER OF THE BRIDE"
ソニー・ミュージックレーベルズ
"HOLLYWOOD’s BLEEDING"
VAMPIRE WEEKENDはアルバムとしてちゃんと聴いた回数が多かったです。最新ツアーの評価も高いので、日本でも早く観たいです。
BIG THIEFは前のと迷ったのですが、好きな曲が多かったので。4AD一門に入ってなんだか風格が出ましたね。
POST MALONEはいい曲が多くて、HIPHOPスターでありPOPスターでありROCKスターでもあるという。
めちゃくちゃ売れてるんだけど、年間ベストみたいなのにはあんまり入ってないのが不思議。
あと、KHRUANGBINのダブの作品も良かったです。
来年はサマソニがありませんが、洋楽シーンを盛り上げるべく意地でも頑張ります。
クリエイティブチーム
メディアアート、データアート、エンジニアリング、インターフェイスデザイン、プロダクトデザイン、建築、映像、音楽など、多彩なバックグラウンドを持つクリエイター、プロデューサーらを擁するチーム
Perfume The Best “P Cubed”
出たばかりのBurialのベスト。
今年8月、ライゾマ主催""SuperFlyingTokyo""でKode9が「Claustro」をかけた時の盛り上がりこそがどれだけ皆が彼の新曲を待ち望んでいたかという証明だと思います。ちなみに当日はレモンサワー好きのKode9の為に〈ハイパーレモンサワー〉を開発して提供しました。Kode9が飲んでくれたかどうかが気になるところ…。
次にFloating Pointsの新譜。
名曲「Nuits Sonores」を彷彿とさせる永遠に聴いてられる系のヒプノティックサウンド。今年のNF in MIDNIGHT SONICではRhizomatiks VJsがFloating PointsのDJセットをサポートしました。DJでは電子音から辺境ディスコまで横断する彼の最新アウトプットにして天才の所業。
最後にPerfume『Perfume The Best “P Cubed”』。
渋谷公会堂のこけら落とし公演「Reframe 2019」では、まさしく3人のこれまでの軌跡を再構築して全く新しい次元に突入していました!Perfumeは止まらない!そんな彼女たち初のベストアルバム。一家に一枚で宜しくお願いします。
小林大介
パルコエンタテインメント事業部所属。音楽担当、出版担当を経て、現在は展覧会企画を担当。
"HOCHONO HOUSE"
"Traveler"
個人的な話ですが2019年は11月に渋谷パルコがリニューアルオープンし、その準備と開店後の運営で大騒ぎな1年でした。3年ぶりに帰ってきた渋谷はレコード屋さんが減ってはいるものの新たな盛り上がりも見せていて街と同期するように大きく変革期を迎えていました。そんな変革過渡期もあって過剰な情報と大きなエネルギーの渦中で体と脳が求めた音楽はおのずと快楽的なものでテクノと歌謡曲に振り別れた1年だったように思います。会社から居酒屋へ深夜バスで移動する際に脳のシフトチェンジの伴奏者としてLORAINE JAMESの「London Ting//Dark As F**k」が生活といううすのろ(©佐野元春)を消し去ってくれました。そして台湾でライブを見る好機に恵まれた細野晴臣のセルフカバーアルバム「HOCHONO HOUSE」も最新というより変わらず大局観の視座がきいた心地よく合点のゆくもので、早歩きが少しだけ弱まった気がします。最後はofficail髭dandism「Traveler」。何故ここまで素直に聞けたのか謎ではありますが、メロディの脳内強制リピートの強さは半端なかったです。オープン準備の深夜作業中に流すと疲労困憊しているスタッフの顔に笑みが戻りました。メロディが勝てば官軍だなと。