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The National / 短編映画のスペシャル上映会 & トークショー レポート

2019.05.14

The National / 短編映画のスペシャル上映会 & トークショー レポート

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The National / 短編映画のスペシャル上映会 & トークショー レポート

 ザ・ナショナルの通算8作目となる最新作『I Am Easy To Find』が、間もなく発売される。グラミー賞最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを受賞した前作『Sleep Well Beast』から2年と空けずに届いた本作。その前作を踏まえてバンドは、より軽やかでしなやかかつ寛容で包容力に溢れたこの新作を完成させた。
 前作とは対照的に“色を使った”アルバム・カヴァーに配されているのは、女優アリシア・ヴィキャンデルの安らかなる寝顔。“I Am Easy To Find”のフレーズとこのカヴァーだけでも、あれこれイマジネーションを膨らますことができるのだが、同タイトルの短編映画『I Am Easy To Find』を観ると一層イマジネーションは大きくなり、アルバムに描き出された世界と映画の間に何かしらの接点を求めながら、頭と心が刺激されフル稼働していく……そんな感覚を味わうことができる。

 去る5月10日、アップリンク渋谷にて、この短編映画の上映会と、音楽評論家の岡村詩野氏と木津毅氏によるトークショーが開催された。
 映画『I Am Easy To Find』は、マイク・ミルズ監督による25分強の作品だ。監督自らがバンドに「撮らせてほしい」というアプローチをしたという。ミルズ監督といえば、エールやブロンド・レッドヘッド、モービー、ベス・オートンら数多くのPVを手がけているほか、ビースティ・ボーイズやバッファロー・ドーター、ソニック・ユースら、これまた数多くのアルバム・カヴァーも手がけており、言うまでもなく音楽との縁は深い。そんなミルズ監督が、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた『20thセンチュリー・ウーマン』(2016年)に続く作品として撮ったのが、この『I Am Easy To Find』ということになる。
 が、映画はアルバム『I Am Easy To Find』のPVではないし、アルバムは映画のサウンドトラックでもない。ミルズ監督曰く、「お互いのことを真似し合うことが大好きな、遊び心と敵対心を持った兄弟のよう」な関係にあるという。
 主演を演じるのはアルバム・カヴァーに登場しているアリシア・ヴィキャンデル。『エクス・マキナ』(2015年)で多くの映画賞を受賞、『リリーのすべて』(2015年)ではアカデミー賞助演女優賞を受賞した彼女はこの短編で、赤ん坊から老女までをひとりで演じる。映像は全編モノクロだが、やわらかなコントラストと奥行きのある画が印象的だ。字幕で状況が語られていくアプローチがまた、観る者の想像を駆り立てる。淡々と、しかしながらエモーショナルに綴られていく女性の一生は、順風満帆ではない。こじらせる母との関係、夢を諦めての結婚、夫との距離、浮気、妊娠、母の死、父の死、結局は夫を看取り自分も人生を終えていく。大きく筋を捉えるとそういうことだが、ミルズ監督の細やかな視線は、小さな出来事や主人公の内面も短いセンテンスの字幕で巧みにフォローする。例えば、少女が嘘をつくことを覚える、夢を持つ、恋をする、孤独を感じる、テレビで戦争を観ること。はたまた、息子への愛情や、その息子が親離れしていく時の心情などもつぶさに伝えつつ、過去と現在をリンクさせ、次第に母の想いにも至らせる。

 上映後のトークショーで木津氏は、「リベラルな白人男性が女性をどう描くのか、という点にミルズ監督とナショナルの共通意識を見出す」と語り、両者の「普通の女性の人生をリスペクトする目線」について言及した。その意味においてこの短編は『20thセンチュリー・ウーマン』とも共鳴する続編のような存在ではないか、という見解は木津氏、岡村氏一致を見た。また岡村氏は、映画の中に何度か登場する“踊るシーン”に着目し「“踊り”は何のメタファーだろう?」と木津氏に問いかけ、彼の「自己表現ではないか」という答から話が展開するなど、興味深い内容に参加者も聞き入っていた。
 その“踊り”に関してであるが、中でも私は、主人公の女性が人気のない職場で踊るシーンと、女性が夢に見る母が踊るシーンがとりわけ印象深く、これらの“踊り”は自己表現でもあるし、自己解放の手段でもあったのではないか、と思ったことを、蛇足ながら加えさせて頂く。

 そして、両氏と参加者が共に、ザ・ナショナルの来日公演を切に祈りながら上映会&トークショーは幕を閉じた。

text by Mika Akao

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