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「あいつら、まったく何やらかしたんだ?」 この新作を聴くとき、アンドリュー・ウェザオール(Andrew Weatherall)とキース・テニスウッド(Keith Tenniswood)の二人があなた方に期待しているのはこんな感想だ。歌を歌うはウェザオール。そしてテニスウッドはギターとベースを弾く。同時に、数多くのドラマーたちが、あの地下スタジオに大切に保管してあった古いドラム・キットを代わる代わる叩く。ドラムは、そう、かつてジャー・ウーブルズ・バンド(Jah Wobble's Band)、そして後にキリング・ジョーク(Killing Joke)が所有していたものだ。そして『フロム・ザ・ダブル・ゴーン・チャペル(From The Double Gone Chapel)』にヴードゥーの魔術が乗り移る……。 製作期間は2年。2年間におよぶ純粋なる快楽主義が音楽へと移し替えられた。アンドリュー・ウェザオールとキース・テニスウッドであるということは、世界を股にしたDJ活動は1年間先までスケジュールが埋まっているということだ。クラブでせっせと仕事をして、聴いたことのないサウンドに神経をとがらせる。昨今ではそっち方面の客もずいぶんと踊るようになっているみたいだから、ロックのギグにも顔を出す。静かに過ごせるときには、映画鑑賞。想像しうる限りのことすべてを生活に詰め込む。当然のことながら、週末にはもうヘトヘトになり、そして月曜日にはスタジオに向かう。そうした生活の成果を上げに、だ。こうした幸福なる偶然の重なりを経て、トゥ・ローン・スウォーズメンのサード・アルバムは形作られた。 ![]() ウェザオールにとっては、新たなる予感もあった。つまらない、幾重にもプロセスを経た、巷にあふれるインテリ風なテクノやエレクトロニカから解放され、より直接的なコミュニケーションや魂を込めたものを作りたいと、彼は思っていたのだ。テクノはもう十分だと感じ始めるときはいつも、彼は自身のルーツであるロカビリーやロックンロール、ダブに先祖帰りしていた。素晴らしいダンス・ミュージックが発する真のエネルギーは――彼の専門はエレクトロ&テクノだけれども――、素晴らしいロカビリーの曲と同質のものだと彼は心得ていた。あの似たような、内からこみ上げる感覚――それに足で反応するか、頭で反応するか。機械を使って音楽を作っているのであって、機械によって音楽が作られるのではない、と。 知り合いの一人が恐ろしいほど古びたイーストエンド界隈にザ・グリフィン(the Griffin)というパブを開いたのも、またひとつの嬉しい偶然だった。ここは、その後、ザ・ダブル・ゴーン・チャペル(the Double Gone Chapel)として知られるようになる。ウェザオールはそこで日曜の夜の常連DJとなり、夕刻の定番、カントリーやブルーグラスのその後に、自身のコレクションから持ち出した1940年代後半のリズム&ブルースやロカビリー、ガレージやサイケを掛けた。 こうした経験がスタジオで渾然一体となり、ウェザオールは気づいたのだ。何ヶ月もの間、著名人をゲスト・ヴォーカルとして招くことのマンネリさ加減をどれほど毛嫌いしているかについて、周囲やその他さまざまな人に文句を言っていた自分に。自分が歌えることは、彼には分かっていた。20余年もバンド活動をしていたし、自分が歌うことが、今回に限っては吉か凶、そのいずれかの結果にしかならないことも分かっていた。彼は歌詞を綴っていたが、これは屈折したロマンティシズムにあふれたかなり個人的なものに仕上がっていた。そして、その歌を他の誰にも歌ってほしくはなかった。だからこそ、彼がヴォーカル・ブースに向かい、ザ・ガン・クラブ(the Gun Club)の「セックス・ビート(Sex Beat)」に挑戦した際、「よくがんばったよ、君。じゃ、ゲスト・ヴォーカリストを呼ぼうじゃないか」と言われると思っていた。しかし、結果は上手くいったんだ。ウェザオールの夕闇がたれ込めるような、無表情のイントネーションが、エレクトロ/ロカビリー/ガレージ・サウンズの重く、束となった力に寄り添う。失敗などあり得ない確実なTLSによるスタジオ・マジックで突然変異したサウンドに、だ。 『フロム・ザ・ダブル・ゴーン・チャペル』は、聴く者の意識に滑り込むというより、むしろ意識に加工されていない生のパワー、生の感情に切り込む。90年代半ば、ウェザオールが所属したセイバース・オブ・パラダイス(Sabres of Paradise)に親しんだ人にとっては、『ホーンティッド・ダンスホール(Haunted Dancehall)』や『セイバーソニック2(Sabresonic ))』の陰鬱とした深みに通ずる、より重いアルバムになるかもしれない。愛の鞭だって? そう思うかい? トゥ・ローン・スウォーズメンは、『フロム・ザ・ダブル・ゴーン・チャペル』を引っ提げて、サウンドシステムとライヴ・バンドによるツアーを計画中だ。具体的な日程はまだ決まっていないが、我々の予想を遥かに上回るものとなる事は間違い無いだろう。 |